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CR回路応答(周波数領域編その1)

CR回路応答(周波数領域編その1)

コンデンサと抵抗1個ずつで構成される基本的なCR回路の周波数特性を覚えておくと、なにかと役に立ちます。


CR回路応答時間領域編では、信号源として電池のような直流源を考え、スイッチで急に信号を加えた時の時間に対する出力の推移(時間応答)を考えました。
こうした設定では、回路に加わる信号は階段のようになるので、その応答は「ステップ応答」とも呼ばれます。(図1)

図1:ステップ応答

それに対して今回は、信号源として正弦波を用います。

そして、正弦波の振幅を一定に保ったまま周波数を順次変化させ、周波数の違いによって出力がどのように変化するのかを問題にします。(図2)

図2:周波数応答

これは、オーディオアンプに、大きさが一定で低い周波数から高い周波数まで変化していく信号を加えて、低い音から高い音まで変化させたとき、スピーカから出る音の大の大きさの変わり方(理想的には一定)によって、システムの善し悪しを評価するのと同じです。

このように、信号源の周波数を変化させたときの被測定物の出力の様子を「周波数応答」と言い、その特性は、「周波数特性」と呼ばれます。


まず、時間応答の時と同様に、積分回路(図2の回路)の周波数応答です。

結果を以下に示します。
このデータは、コンデンサの値を1マイクロファラッド、抵抗は1キロオームとしたときのものです。

図3:CR回路応答1

グラフの横軸は周波数です。
縦軸はふたつあって、ひとつは振幅を、もうひとつは位相を示しています。
周波数の目盛りは対数目盛、振幅の目盛りはデシベルですから、やはり対数であることに注目してください。(位相の目盛りはリニアです)


周波数を低域から高域へと変化(この操作を計測では掃引もしくはスイープと呼びます)させたときの振幅は、100Hz付近まではほとんど入力と同じ(0dB)で一定ですが、周波数が高くなるにつれて出力は小さくなっています。(右下がりのグラフ)

つまり、積分回路は低い周波数は通し、高い周波数は通しにくい性質があるわけです。

別な言い方をすると、「積分回路はローパスフィルタである」ということになります。


図4は周波数特性(振幅)の曲がり角付近の特性を模式的に示したものです。

振幅が-3dBとなる周波数を「遮断周波数(Cutoff frequency)」と呼び、一般にfcと表記します。

図4:遮断周波数付近の特性

さらに、fc以下の周波数範囲を「通過領域あるいは通過域」、fc以上を「遮断領域」などと表現することもあります。

通過領域と遮断領域を各々直線的に延長したとき(図4の点線)、両者が交わる点の周波数がfcです。

そして、fcからある程度遠ざかった遮断領域では、周波数が2倍になると応答は1/2、周波数が10倍なら応答は1/10というように周波数に反比例した特性になります。

これをデシベルで表せば、6dB/oct(oct:オクターブ)あるいは
20dB/dec(dec:デカード)となり、図4のように直線になります。


ここで、覚えておきたいことがもうひとつあります。
それは、CRの値と遮断周波数fcの関係です。

測定器を使うだけなら回路の定数関係などは不要と思われるかもしれませんが、CRの値と遮断周波数fcの関係は覚えて損はありません。

式で表すとfc=1/2πCRになるのですが、それは回路設計者に任せるとして、実用的には以下の何れかを覚えておけば応用が利きます。

低周波の測定では、
1kΩ(キロオーム)と1μF(マイクロファラッド)で160Hz

高周波の測定では、
1kΩ(キロオーム)と1pF(ピコファラッド)で160MHz

あるいは、
50Ω(オーム)と1pF(ピコファラッド)で3.2GHz


上記の内一つを覚えておけば、後は比例計算でどんな値でも求めることができます。

たとえば、出力インピーダンスが100kΩのセンサを、100pfの静電容量があるケーブルに接続すると積分回路が構成されるので、(測定器を接続する以前に)16kHzで-3dBとなり、出力電圧が約70%に低下することが暗算で求まります。

周波数領域編(その2)へ続く

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