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ひずみと振動計測の基本

ひずみと振動計測の基本

ひずみと振動の計測は、機械系の電気計測の代表例と言えます。今回は、センサを中心とした電気信号への変換の仕組みの解説です。


物体に応力が加わると、その物体は少し変形します。
これを「ひずみ」と呼びます。
電気信号にも”ひずみ”という用語があるので紛らわしいのですが、両者は全く異なる意味を持つ用語なので、混同する事の無いようにしてください。


物体のひずみには、変形が固定したままで時間的な変化の少ない「静ひずみ」と、物体が振動によって”たわむ”ときのように短い時間周期で変形を繰り返す「動ひずみ」があります。 
静ひずみは、ビルなどの建築物や橋梁などの構造物のストレスとして、動ひずみは自動車のエンジンなど物体の振動であると考えることもできます。静ひずみを電気信号に変換すれば、直流に近い周波数の低い信号になり、動ひずみは、おおよそ0.1Hzから数キロヘルツ程度までの交流信号になります。


物体のひずみを電気信号に変換するセンサはいくつかあり、最近では半導体を用いたセンサも多く用いられるようになってきましたが、計測用途の精度が得られる例として代表的なのは「ひずみゲージ」を使う方法があります 。

ひずみゲージ(Strain gauges:ストレンゲージ、ストレインゲージとも呼ぶ)は、右の図のように薄い絶縁体に銅・ニッケル合金などの金属の抵抗体が取り付けられた構造をしています。計測は、被計測物にゲージを貼り付けて行います。物体がひずむと、ゲージが僅かに圧縮(または伸長)し、ゲージの電気抵抗が変化します。

この電気抵抗の変化を、電圧信号に変えて記録計に保存したり、アナライザで分析します。

図1:ひずみゲージ

抵抗の変化を電圧の変化として取り出すには、ブリッジ回路が用いられます。
図2でR1:R2=R3:R4というバランス状態であれば出力には電圧は現れませんが、バランスが崩れると抵抗値の関数として電圧が得られます。
図ではゲージはひとつですが、実際にはR2にも同じゲージを入れて温度変化による影響をキャンセルしたり、物体の表と裏にゲージを貼って伸びと縮みを同時に検出して感度を2倍にすることや4辺全てをゲージにする方法などもあります。

図2:ひずみ検出回路

ひずみゲージの抵抗変化を電圧信号に変える専用のアンプは「ストレインアンプ」と呼ばれゲージに合わせていろいろな製品があります。
市販のストレインアンプにはひずみの無い状態でブリッジのバランスをとって出力をゼロにする機能やノイズの影響を排除するためのフィルタが搭載されています。

ブリッジの信号源は原理的には直流でも交流でもかまいません。交流の方が安定度が良くなりますが、動ひずみ計測では振動の周波数よりも信号源の周波数がずっと高い必要があるため、高域で制限を受けます。

ひずみゲージを使う計測では、ゲージを被計測物に密着させ、ゲージの取り付け方向とひずみの方向が一致していなければなりません。被計測物が高温になる場合などは接着剤も吟味する必要があります。
ひずみゲージは、物体の変形を捉えることができるので、構造物のモニタなどのほか、振動や圧力、重量の計測などにも応用されています。


次に、振動の計測では加速度を計測するのが一般的です。
振動における物体の変位・速度・加速度の間には微分・積分の関係があり、例えば、変位の微分は速度に、速度の微分は加速度になりますが、変位を計測して速度や加速度を求めることはあまり行われません。
信号を微分することは、電気的には6db/octのハイパスフィルタを通すことと等価であり、これは高域に分布するノイズを増加させ、計測のS/Nを悪化させることになるからです。


加速度を電気信号に変換するには、加速度センサを使用します。
加速度センサもサーボ機構を使ったものなど色々ありますが、最も多く用いられるのは圧電素子を使った「加速度ピックアップ」です。


図3は圧縮型の加速度ピックアップを示しています。このタイプの多くは短い円筒型をしており、被計測物にネジなどで固定して使用します。
内部は圧電素子を鋏む形で質量のあるオモリが取り付けられていて、オモリはバネ性を持った慣性運動をします。
計測物が振動すると、オモリは慣性によって同じ位置にとどまろうとするため、圧電素子には加速度に比例した力が加わり、電荷の変化として出力されます。

図3:加速度ピックアップ

従って、圧電型の加速度ピックアップはオモリと圧電素子からなる機械系の自己共振周波数以下で使用する必要があります。また、ピックアップの出力は加速度に比例した電荷なので、計測器側でこれを電圧信号に変換する必要があります(図4)。このための回路は「チャージアンプ」と呼ばれ、これも多くの製品が市販されています。

図4:チャージアンプ

チャージアンプで注意する点は、ピックアップとアンプを接続するケーブルです。ケーブルを動かしたり折り曲げたりすると、ケーブル内部の線間の静電容量が変化し、これが電圧に変換されてノイズとして出力されるからです。
このため、接続には指定された専用のケーブルを使用します。
また、ピックアップの内部にチャージアンプを内蔵させることによってこの問題を回避した加速度センサもあります。この場合は、センサケーブルを通じて電源を供給するのが一般的です。

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