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アイパターンとコンスタレーション(その2)

アイパターンとコンスタレーション(その2)

電気信号の挙動を視覚的にとらえたいときには、「波形」や「スペクトラム」を見るのが一般的です。
ここでは、複数の信号間の関係性を知りたい場合などに適した他の表現法を考えます。


オシロスコープは横軸を時間にとって「(時間)波形」を描く測定器です。
多くは2チャネル以上の入力を持ち複数の信号を同時に観測することで、相互の時間関係を知ることができるようになっています。

一方、ほとんどのオシロスコープにはX-Yの表示モードも用意されています。

X-Y表示とは、一方のチャネルに入力された信号で横軸(X)を駆動し、もう一方に入力された信号で縦軸(Y)を駆動する表示モードです。

たとえば、X-Yモードを使えば二つの信号の周波数や位相の関係が一目でわかります。
図1A は通常の2 チャネルモードで二つの正弦波信号を表示させたものですが、この信号をX-Y表示モードで観測すると図1B のようになり、二つの信号が3倍の周波数関係にあることがわります。
波形がもし静止して見えれば二つの信号は同期していることもわかります。
なお、図1B のような観測波形はリサジューあるいはリサージュ(Lissajous:人名)と呼ばれます。


X-Y表示はX入力とY入力の関係をグラフ化したものと考えることもできます。
たとえば、スイッチング電源のスイッチ素子の動作を確認する場合に、素子にかかる電圧と素子を流れる電流を検出しX-Y表示させれば、動作状態における動作領域を確認できます。
あるいは、XとYに磁界と磁束密度に比例した信号を入力すれば磁性体のBH 曲線が得られるなど、さまざまに応用できます。

図2:スイッチング素子の動作測定例
上段は通常のオシロスコープ表示
(電圧・電流・両者を掛け算して求めた瞬時パワー)
下段がX-Y表示した素子の動作領域
(安全動作領域「SOA」内であることの確認)
 写真は横河メータ&インスツルメンツ


X-Y表示の考え方を、デジタル通信の変調解析に応用したものにコンスタレーションと呼ばれる表示法があります。
デジタル変調にはさまざまな方式がありますが、QAM・QPSKなどその多くは正弦波の直交性を利用しています。
I-Q平面上に符号を割り当てて位相の90度異なる正弦波(IとQ)に各々変調をかけます。
そして、信号は「各符号点間を瞬時に行き交う」はずです。

ところが実際は、ポイントからポイントへ瞬時に、しかも位置のずれが無く、直線的に移動することはありません。
その様子を知るためにI-Q信号をX-Y表示させると、アイパターンの場合と同様に行き交う信号の軌跡は図3Bのような広がりを持って見えます。


この場合、広がりが小さいほど理想の変調波形に近いといえ、実際の信号が意図した範囲の中で通過あるいは遷移しているかなど、変調波全体の信頼性を一目で判断できます。

また、符号の読み取りタイミングにおける位置だけを表示するようにすれば、結果はあたかも星空のようになります。 これがコンスタレーション(constellation:星座)と呼ばれる観測方法です。

コンスタレーションは、アイパターンとリサジューをデジタル変調信号に応用したものと考えることができ、信号の揺らぎやノイズなどの影響が見て取れます。

コンスタレーションはさらに、IとQの直交性やゲインの不均衡なども知ることができます。
たとえば、位相に揺らぎがあると回転方向にばらついたり菱形に変形したりして見え、利得に不均衡があると全体が縦横どちらかにつぶれて見えます。

図4:π/4シフトQPSKのコンスタレーション例(下は符号点だけを抽出表示させたもの)

さらに、個々の符号点に着目すれば理想の符号点と測定点とのズレの大きさから変調の精度を定量的に評価できます。

この場合、理想の符号点と測定点との差分をエラーベクトルと呼ばれ、実際に理想の符号点ベクトルとの絶対値割合や振幅(絶対値)の差や位相差などで評価するEVM(Error Vector Magnitude)測定の基となっています。

図5:エラーベクトル

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