計測器・測定器玉手箱

入力インピーダンスと計測精度

入力インピーダンスと計測精度

入力インピーダンスは電子計測器の基本仕様のひとつです。計測対象と計測器のインピーダンスを理解することで、計測器の持つ本来の精度を引き出すことができます。


モノを測るときには、計測器の確度仕様だけでなく、計測の方法によって生じる不確かさを考慮しないと、せっかくの計測値が意味のないものになったり、計測器の精度を活かしきれなかったりします。

確度が±3%の計測器を用いるのと±0.3%の計測器を用いるのでは、後者の方が10倍も精度の良い計測ができるように思いがちですが、場合によっては前者の方が良い結果が得られることもあります。
その原因となる代表的な要素のひとつが計測器の入力インピーダンスです。


ここで、テスタで電池の電圧を計測するといった基本的な計測を考えます。
電池と電圧計(テスタ)をつなぐだけなので、原理的にはごく簡単です。

図1: 電圧計測の原理的なイメージ

ところが、この計測で電圧計のもつ精度がそのまま適用できるのは、電圧計に電流が全く流れ込まない時だけです。
しかし、現実には電圧計には僅かですが電流が流れ込みます。
また、電池(被計測物)は電流が流れることによって端子電圧が変化します。
被計測物に計測器を接続したことによって被計測物の状態が変化してしまうことを「計測器の負荷効果」と呼びます。


右の図は、計測器の負荷効果を考慮した電圧計測の図です。

電圧計には電流が流れるので、外部からは抵抗(Ri)が接続されたのと同じに見えます。

電池は電流が流れると端子電圧が下がる(電圧降下)ので、内部に抵抗(Ro)が入っているのと同じです。

そして、電圧計の指示値は、図のEmの値です。

図2: 電圧計測の現実的なイメージ

このとき、Roを被計測物(場合によっては信号源)の出力抵抗、Riを電圧計(計測器)の入力抵抗と呼びます。


RoとRiによって計測値Emはどのように変化するのかは簡単なオームの法則の問題で、その答えは右の式になります。

式で、EmがE(計測器を接続する前の電圧)と等しくなるのは、RoがゼロかRiが無限大のときです。
別な見方をすると、計測器の入力抵抗が被計測物の出力抵抗に比べて遙かに大きければ(Ro≪Ri)負荷効果を無視できると言えます。


電流計測の場合はどうなるかというと、電圧計測とは関係が逆になります。

本来の電流値 I と計測値 Imの関係は図の下に示した式になるので、Imが I (計測器を接続する前の電流)と等しくなるのは、RiがゼロかRoが無限大のときです。
別な見方をすると、計測器の入力抵抗が被計測物の出力抵抗に比べて遙かに小さければ大きければ(Ro≫Ri)負荷効果を無視できます。

図3: 電流計測の現実的なイメージ

誤解しやすいのは計測器の確度表示です。これまでの例で述べるなら、計測器が規定しているのは、確度はEや I ではなく、EmやImの確度であるということです。
ですから、いくら確度の高い計測器を用いても、計測する値(EmやIm)がそもそも本来の値から外れていたのでは正しい値は得られません。間違った値を正確に計ることは意味がありません。


ここまでは、直流の計測について説明してきました。これまでの話を交流まで拡張したときはどうなるでしょうか?
交流計測での負荷効果は、抵抗だけでなく、静電容量(コンデンサ)やインダクタンス(コイル)についても配慮が必要となります。そしてこれらを総合したインピーダンス(交流に対する電流対抗成分)で考える必要があります。

一般にはインダクタンスよりも静電容量が寄与する割合が多いので抵抗とコンデンサで考えることが殆どです。

右の図は、その様子を表したものです。
Coは出力容量、Ciは入力容量と呼びます。
そして、CoとRoを合わせて出力インピーダンス、CiとRiを合わせて入力インピーダンスと呼びます。

図4: 交流に対する負荷効果

回路網理論の話ではないので詳しい解析は避けますが、
考え方としては直流の場合と同じで、電圧計測の場合は計測器のインピーダンス(CiとRiの合成値)が高いほど負荷効果は少なくなり、電流の場合はその逆になります。
また、Riが大きいほど、また信号の周波数が高くなるほどCiの影響が大きくなります。
例えば、同じものを同じ計測器で計測する場合に、直流や周波数の低い部分では負荷効果が小さく高精度な計測ができても、周波数が高くなるにつれて負荷効果が大きくなるために精度が落ちていきます。
一般には計測器自身の確度も周波数が高くなると悪くなる傾向があるので、なおさら不確かな計測になります。
従って、高インピーダンス・高周波数の計測ではCiの値ができるだけ小さくなるように努めなければなりません。


ほとんどの計測器では、仕様(入力インピーダンス)でRiとCiの値を明示しています。

表記例 入力インピーダンス : 1MΩ 並列に 50pF

負荷効果が小さく不確かさの少ない計測をするためには、Riが大きくCiが小さい(電圧計測の場合)計測器を選べばよいのですが、RoやCoは計測対象によって異なるので、やみくもに大きなものを求めてもオーバスペック(過剰仕様)になるだけでコスト的にも不利なこともあります。従って、計測の不確かさとの兼ね合いで最適な機種を選択します。

また、最終的な入力容量は、計測器自身の入力容量(仕様に記載された値)だけでなく、計測器と信号源との接続部分で生じる静電容量も含まれるので、高インピーダンス・高周波数の計測では接続線や端子による容量の増加が極力少なくなるように注意深い配慮が必要です。

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