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微少信号の測定原理

微少信号の測定原理

計測、特にサイエンス系の計測では、センサで検出される信号のレベルがごく僅かであるために,通常の測定器を接続したのではうまく測定できないことがあります。


こうした場合には、センサと測定器の間にプリアンプ(前置増幅器)を入れて、測定器に入る信号のレベルを大きくしてやればよいように思えます。

ところが、信号のレベルが極めて小さい場合は、センサの出力で既にノイズが多く混ざっているので、それを増幅しても、ノイズも一緒に大きくなってしまい、うまく解析ができません。

微少信号の測定とは、即ち、相対的にノイズが大きな信号の測定であると言えます。
したがって、微少な信号をうまく測定するコツは、できるだけノイズを小さくすることにつきます。

センサ、プリアンプ、測定器などで構成される測定システムで問題になるノイズは、システムの外部から侵入するものと、センサや増幅器自身が発生するノイズの二つに分けることができます。

微少信号を測定する場合は、まず第一に外部からのノイズの侵入を徹底して防ぐことです。
外部のノイズは、AC電源ラインからの誘導によるハム雑音や近傍のデジタル機器から発生するノイズ等があります。

外部雑音と内部雑音

システムにコンピュータなどのデジタル回路が含まれる場合は特に注意が必要です。
この場合は物理的にはシステムの内部にノイズの源があるわけですが、電気的には外部のノイズと同じです。

これら外部ノイズに対しては、

■システムを厳重にシールドする事や差動式の回路にする
■また、アース(グラウンド)のポイントや引き回しを最適化する
■ディジタル回路とアナログ信号回路のグラウンドを分離する

等でかなり小さくすることができます。

特にセンサの近傍はインピーダンスが高いことが多く、ノイズを拾いやすいので最も気を遣います。

2番目は、システム内部で発生するノイズは回路素子の熱雑音等に起因するノイズです。
熱雑音のレベルは極めて小さいので通常の計測では問題になりませんが、測定信号のレベルがマイクロボルトのオーダ以下になると熱雑音が問題になります。

熱雑音は、計測信号が通過する回路素子(抵抗や半導体)で発生するので、外部からのノイズのように計測信号から遮断するというわけにはいきません。
外部からのノイズは防ぎようがありますが、内部のノイズは防ぎようのないノイズであると考えることもできるわけです。

ところで、熱雑音は素子の絶対温度と回路の周波数帯域幅に比例します。
従って熱雑音を減らす方法は、システムを冷却する事と回路の帯域幅を狭くすることの二通りしかありません。
例えば、宇宙から到来する信号を捕らえる場合などはシステムを冷却して雑音を小さくします。

回路の帯域幅を狭くすることは比較的簡単にできますが、測定する信号の帯域幅よりも狭くすることはできません。

プリアンプを使用する場合はプリアンプで発生するノイズが問題になります。
プリアンプのノイズ特性はノイズフィギュアで評価できます。
詳しくは、計測に関する知識のノイズフィギュアの項を参照してください。

外来のノイズ、内部のノイズ何れに対してもできるだけの対策をして、それでも取りきれないノイズは、解析段階で取り除く他ありません。

解析段階でノイズを取る手法はいろいろありますが、代表的な手法として平均化処理が挙げられます。
ノイズ(主に内部雑音)は、ランダムであること、従って時間的に平均するとゼロになる性質があります。

それに対して周期的な信号は、その周期で平均(足し合わせて回数で割る)しても形は変わらないという性質の違いを利用したものです。

平均化の演算は単純加算平均や移動平均、指数平均などがあり、信号の性質とノイズの量によって使い分けます。

平均化処理

信号の検出という意味では、測定器内部で作った基準信号との相互相関をとる方法も大きな効果が得られます。
因みに、携帯電話で用いられるCDMA方式では相関によって目的信号を取り出しています。 

微少信号の測定を主目的とした代表的な計測器にロックインアンプがあります。
「アンプ」という名前が付いていますが、その原理(下図)は同期検波器の一種であり、電圧計の仲間です。

測定対象は繰り返し信号である必要がありますが、必ずしも正弦波である必要はありません。
また、得られる結果は、信号のレベルと位相の値です。波形は再現されません。

測定する信号を繰り返し信号とするために、例えば微少な光の測定であれば、測定する光をスリット(切り込み)のある回転円盤に通してチョッピングするなどの方法が採られます。
回路の時定数を大きくしたロックインアンプは、先に説明した回路の帯域幅を極めて小さくしたものと等価になります。
また、長時間の平均化していると考えることもできます。

ロックインアンプの原理

測定信号と同期した信号でスイッチを開閉し、その出力をRとCの回路で積分(平均化)すると、信号は一定の直流値に収束します。
これに対して、ノイズはゼロに収束します。
計測する信号の振幅をA、同期信号(参照信号とも呼ばれる)との位相差をa、とすれば、出力の直流の値Vは、

V=A cos(a)となります。

したがって、Vが最大となるように同期信号の位相を調整すれば、Aの値(直流)からVの値が求まります。

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