計測器・測定器玉手箱
計測器とコネクタ(その1)
計測器とコネクタ(その1)
電子計測器のパネル面には多くのコネクタが付いています。
私たちはコネクタを通じて測定信号をつないだり、処理された信号をコネクタから取り出したりします。
何気ない行為ですが、実はとても重要です。
何故なら、計測器の性能が保証されるのは信号の出入り口であるコネクタの先端においてであるからです。
計測器はコネクタに正しく信号が接続され、入力または出力されていることを前提にしていますので、信号は測定器のコネクタ端まで正しく導かれ、かつ正しく締結されなければ、測定器の持つ精度を引き出されません。
したがって、正しい測定には「信号を接続するケーブルとコネクタが適正なものであること」が絶対要件です。
今回はその内の同軸コネクタについての基礎知識です。
電子計測で一番多く用いられるのはBNCです。計測器の端子の多くがBNCになっています。
そして、通常は1mほどの同軸ケーブルの両端にBNCの付いたケーブル(BNC-BNCケーブルと呼ぶ)で接続します。
まず、BNCという名前ですが、BNCのBはバネの押し回しでロックできるバヨネット(bayonet) 構造から来ているという説と、Babyつまり「小型の」という説とがあります。
NはN型と呼ばれるタイプのコネクタであることを意味しており、NはNavyのNのようです。
最後のCはコネクタのCです。
したがって、「BNCコネクタ」と呼ぶのは二重表現となりますが一般的にはこのような表現でも通用します。
ちなみに75オーム専用に75オーム系の同軸ケーブル(3C-2Vなど)とBNCを組み合わせたものもあります。この場合はBNCにも75オーム仕様の物が使われています。
ただし、この場合の50オームと75オームのBNC は似て非なるものであり、機械的にも相互接続できませんので注意してください。
コネクタと同軸ケーブルの接続は自分で行うこともできますが、ケーブルの編素のほぐし方や芯線のハンダ付け、剥く長さなど意外と難しいものです。
コネクタは伝送路の一部分ですので、高い周波数ではインピーダンスマッチングがとれていないと反射などの乱れを生じます。
このため、BNCの電気特性や機械寸法などはJISやMIL規格で定められています(JIS C 5412など)。
特性インピーダンスは50オームと定められていて、おおよそ1GHzくらいまで使えますが実用域は100MHz程度です。
50オームは使用するケーブルも50オーム系が求められ、測定用には可撓性に優れたRG-58/Uなどが多く使われています。
ただ、とくに低周波用途の測定器の場合は、50オームだからというよりも小型で便利だからという理由で採用されていることの方が多く、単なる接続端子として50オーム以外の部分にも盛んに使われています。
別の言い方をすると、BNCが使われているから50オーム回路だと判断するのは誤りです。
ちなみに75オーム専用に75オーム系の同軸ケーブル(3C-2Vなど)とBNCを組み合わせたものもあります。この場合はBNCにも75オーム仕様の物が使われています。
ただし、この場合の50オームと75オームのBNCは似て非なるものであり、機械的にも相互接続できませんので注意してください。
コネクタと同軸ケーブルの接続は自分で行うこともできますが、ケーブルの編素のほぐし方や芯線のハンダ付け、剥く長さなど意外と難しいものです。
自作するのであればケーブル接続分が圧着式のBNCと専用工具を使うのが良いでしょう。
無用なトラブルから逃れるためにも測定用には信頼できる完成品(ケーブルアセンブリ)を使用することが望まれます。
BNCの親分に当たるのがN型コネクタです。
形も大きくなりますが、こちらは10GHzくらいまで使えます。
したがって、スペクトラムアナライザなど高周波用の測定器の入出力に多く使われてきました。
特性インピーダンスは50オームです。
N型は接続するケーブルも太い物が使われることが多いのですが、ケーブルのチカラで内部の同軸の編素が引きちぎられて接触不良になることがあります。
千切れるところまではいかなくても、接続が不完全になるとインピーダンスも狂って反射を生じることになるので、ケーブルの引き回しなどでコネクタに力がかからないように注意しましょう。
なお、BNCとN型に共通することは、オス(ジャック)側の中心導体(尖ったピン)の長さ(出方)が接触に大きな影響を与えます。
これはコネクタケーブル作成時のケーブルの切り方などに因ることもありますが、使用するうちに温度変化やケーブルの折り曲げなどで伸び縮みしてしまうことが大きな要因です。
測定に際してはコネクタの中心導体が引っ込んでいないか、出っ張り過ぎていないかをチェックする習慣を身に付けましょう。
計測器の小型化・多チャネル化に伴い、最近の計測器にはSMA タイプのコネクタが使われているものも多くなりました。
SMAというのは、Subminiature Type A(超小型のA タイプ)という意味です。
小型で高周波特性も比較的良いコネクタなのですが、本来は機器内部の接続用を想定したコネクタであり、計測用に抜き差しを繰り返すことを考慮したコネクタではないので、慎重な取り扱いを心がけてください。
ちなみに、BタイプのSMB、CタイプのSMCコネクタも存在します。
また、放送用のレベルチェッカなどテレビ用測定器では一般のテレビ配線に用いるF 型のコネクタを採用したものがあります。
扱う周波数がマイクロ波からミリ波領域に達するなどの測定器では上記よりもさらに精密なコネクタ群が使用されます。
波長が短くなることなどから、コネクタのサイズが小さくなることが特徴の一つですが、その精密さがゆえに測定器メーカや機種ごとに採用されているコネクタが微妙に異なっているという現実があります。
したがって、マイクロ波領域では測定器メーカが指定するコネクタとケーブルアセンブリを使用することが必須となるのと同時に、較正などの作業も必要となります。
さらに、締め付けトルクの管理や接触部のメインテナンスなど取り扱いにも熟練が要求されます。