計測器・測定器玉手箱
USBの基礎知識
USBの基礎知識
USBインタフェースを搭載した計測器が多くなりました。
電子計測器とパソコンとの接続インタフェースには長い間GP-IBやRS232Cなどが使われてきましたが、近年では民生機器を中心に広く普及しているUSBの採用が主流です。
USB(USB1.0)は1996年に民間のメーカグループによって提唱された機器間インタフェース規格です。
規格はその後USB Implementers Forum(http://www.usb.org/)に移管されましたが、今なお進化と拡張を続けています。
USBはUniversal Serial Busの略ですが、このうちでU(Universal)がUSBの出現と急速な普及の背景をよく表しています。
USBはひとつのUniversalなインタフェースでさまざまな機器を接続できることが最大のメリットです。
ドライバもパソコンのOS(operating system)にはじめから組み込まれているので、ほとんどの場合すぐに使えるというメリットも一般ユーザに広く受け入れられる源となりました。
接続機器側のハードウェアの負担が少ないため、機器の価格が安いという点も見逃せません。
USBはホストコントローラを中心にしたスター型のネットワークであり、全体はハブによって分岐するツリー構造をしていています。
機器が稼働中であっても接続の変更(コネクタの抜き差し)ができるホットプラグ機能も民生機器に良くマッチします。
なお、対向する機器を対等の関係にできる「USB On-The-Go」の規格も別に定められています。
USBでは複数の動作モードが規定されています。
バージョンの改訂毎に高速化して来た経緯があり、機器によって対応できるモードやコネクタが異なります。
このことはUSBを使っていく上での大きな注意点でもあります。
ちなみに、ケーブルではなく無線で繋ぐ「Wireless USB」も策定中です。
USBの工夫の一つに信号線のほかに電源の線を設けて電源供給できるようにした「バスパワー」が挙げられます。
このこともまた応用拡大の要因となり、パソコンの周辺機器は量も種類も格段に増えました。
電源容量に関しては、100W までの電力供給を可能にするUSB PD(USB Power Delivery) なども提唱されています。
ここまでは、USBの概要とメリットを掲げてきました。
以下はUSBと計測器との関係です。
測定器とコンピュータを接続する場合、古来はGPIBやRS232などのインタフェースが使われてきました。
ネットワークに組み入れられることが想定される測定器ではLANインタフェース(Ethernet)を搭載したものもあります。
XI/LXI/VXIといったコンピュータ統合型のモジュラー計測システムも普及していますが、専用モジュールの組み合わせとなるため、用途を特定したシステム応用に限られます。
GPIBは高い信頼性を確保できますが「専用のインタフェースカードが必要、ケーブルが太く扱いづらい」などの問題があり、通信のスピードも遅いので、測定器の外部設定と測定結果の転送に使い道が限られていました。
これに対してUSBは、どのパソコンにも搭載されているので使う側にとっては初期コストがかからず接続も容易です。そのうえ転送のスピードも十分です。
フィールドで測定した大量のデータを小さなUSBメモリに取り込んで持ち帰る、ということもできるようになりました。
パソコンでの測定データ処理やパソコンを核とした計測の自動化・システム化はより身近になるでしょう。
USBはさらに、測定器に別の進化ももたらしました。
それは俗に「USB計測器」と呼ばれる測定器ジャンルの出現です。
ここで言うUSB計測器とはUSBの機能を測る測定器ではなく、パソコンのUSB 端子に接続してパソコンおよび専用のアプリケーションソフトと一体で使う測定器群のことです。
USB 計測器の多くは、測定信号のアナログ処理部分とAD 変換部だけを本体に備え、後の解析処理はパソコン側に委ねます。
今日のパソコンは測定器が必要とする処理能力は十分に備えているので高度な解析や表示も可能です。
さらに、測定器側はパネル設定や解析・表示部分を必要としないので極めてローコストに測定器を提供できます。
ただ、これを実現するためにはデジタル化した信号データをパソコンへ高速に転送する必要があるわけで、汎用かつ高速のUSBがこれを可能にしたというわけです。
良いことずくめに見えるUSBですが、計測器にとって理想的なインタフェースかというと、必ずしもそうとは言い切れない面もあります。
ひとつは、USBの規格が頻繁にバージョンアップと機能拡張を続けている点です。
USBは時代のニーズと技術進化に素早く対応しています。
最高動作速度にしても当初の12Mbpsから480M、5G、さらに10Gbpsと進化しています。
また、コネクタやケーブルもバージョン毎により小型なものへと矢継ぎ早に変更されました。
これら絶え間のないアップデートは、アプリケーションのライフサイクルが短い民生機器に歩調を合わせたものです。
これに対して計測や制御は利便性よりも信頼性と再現を重視する世界です。
「今できたことが数年後にはできなくなる」のでは受け入れ難く、その意味で頻繁なアップデートは歓迎されません。
また、制御を伴うシステムで使う場合などには、システムとしてのリアルタイム性や遅延などについても十分に検討する必要があるでしょう。
ネットワークに組み込まれる場合にはセキュリティへの考慮なども求められるわけですが、USBがこれらに対して最適な解を持っているとは言い切れません。
さらに、細かい話になりますが、USBは計測器等のアプリケーションを想定していないことから、OSに組み込まれたドライバでは対応できないことがあります。
これらの点もわきまえた上で、多くのメリットがあるUSB を計測に有効活用していくことが望まれます。
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