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アイソレーションアンプ

アイソレーションアンプ

大きな雑音の影響から逃れたり使用者の安全のために、アイソレーションアンプが使われます。アイソレーションは工業計測や生体の計測に欠かすことのできないテクニックです。


センサと計測器が離れていたり、付近に大電流の回路があったりすると大きなコモンモードノイズが発生します。

このとき、シングルエンド入力の増幅器ではコモンモードノイズが計測信号に直列に加わるため大きな誤差になります。コモンモードの影響を回避するには差動増幅器が使われます。
差動増幅器は、二つの入力端子間の差の電圧だけを増幅するので、二つの端子に共通して加わるコモンモードノイズは出力に現れないからです。

図1 コモンモードノイズとシングルエンド入力

計測器の入力がシングルエンドしか対応していない場合は、差動入力を持つプリアンプを計測器の前段に使用すれば、差動入力の計測器にすることができます。

ただし、差動増幅器の性能が活かされるのは、信号源(センサ)を含めて、増幅器の二つの端子に加わる回路のインピーダンスが等しい(回路がバランスしている)ことと、信号源に対して増幅器のインピーダンスが十分に大きい必要があります。

図2 コモンモードノイズと差動入力

次に問題になるのは、コモンモードノイズの大きさです。

コモンモード電圧がそれほど大きくなければ、回路は正常に動作しますが、コモンモード電圧がある程度以上になると、コモンモードノイズのために差動増幅器が飽和して正常に動作しなくなります。

通常、この限界は1ボルト程度ですが、実際には機器によって異なります。

自然発生的なノイズの場合はそれほどの電圧にはなりませんが、例えば、プリント基板上にある部品の両端の電圧を測ろうとした場合には、その部品(の両端)がグラウンドに対して電位を持っていることがあります。(図3)

図3 回路で発生するコモンモード

大きなコモンモードノイズは、工場やプラントなど、大電力の機器と高感度の電子機器が混在する場所で頻繁に発生します。

図4で、Swをオン/オフした場合a,b両点の電位は共に変動します。
二つの回路に共通したインピーダンス(図4では抵抗 Rc)が存在すると、一方の回路の電流変動によって他方の回路の電位が変動し、コモンモードノイズとなるわけです。

図4 共通インピーダンスによるコモンモードの発生

実際の共通インピーダンスは、グラウンド(アース)の接地抵抗として存在する場合が多いのですが、例えば、共通となる抵抗値が0.1オームだったとしても、スイッチする側の電流が100アンペアあれば、10ボルトのコモンモードノイズが発生することになります。


この問題を解決するのがアイソレーションアンプです。

アイソレーションアンプは図5のように入力と出力の回路が絶縁された増幅器です。

入力と出力は電源も含めて絶縁されており、電気的な接触はありません。

信号の伝達はトランスやフォトカプラ(光結合部品)が使われます。

図5 アイソレーションアンプ

入出力間の耐圧は、数百ボルトから数千ボルトあるので、差動増幅器のようにコモンモードによる飽和の心配がありません。

また、図5ではアイソレーションアンプの入力回路形式をシングルエンドで描いてありますが、アイソレーションアンプであって、かつ差動入力回路を持った製品もあります。


アイソレーションアンプにはもう一つ、安全の確保という大きな役割があります。

例えば、右の写真のように、商用の電源ラインのコンセント端の電圧波形を観測したいとします。

この場合、シングルエンドのオシロスコープ(通常のオシロスコープはシングルエンド)を直接接続してはいけません。

図6 ACの電圧波形を計測したい

ACラインの電位がオシロスコープのグラウンドと等しくなり、ケースに触れたとたんに感電する、もしくはACラインをショートしてブレーカが落ちます。
プローブを使う使わないに関係なくACラインに直接計測器を接続することは絶対にしてはいけません。

これは電子電圧計(ミリバル)を使ってACラインの電圧を測るときも同じです。


こうした場合にアイソレーションアンプを使用すれば、入出力が絶縁されているので、安全に計測できます。高圧線上の信号もアイソレーションアンプなら計測可能です。

また、医療器具など生体の信号を計測する場合は、これまでとは逆に、計測器側から信号源(=生体)側に電流が流れる危険があります。
この場合にもアイソレーションアンプを使えば、入出力が絶縁されているので、出力側からの電流の流入を回避できるので安全です。
このため、医療器具では法令でアイソレーション(入出力の絶縁)が厳しく定められています。


アイソレーションアンプは、大きなコモンモードノイズの排除や安全の確保を目的として、工場やプラント、そして医療器具などさまざまな場所で用いられています。
アンプという名前が付いていますが、入力より出力の方を小さく使う(増幅度が1より小さい)場合もあります。また、アイソレーションアンプとして独立した筐体にするのではなく、機器の入力部に組み込まれていることも多いようです。

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