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シールド線と同軸ケーブル

シールド線と同軸ケーブル

電子計測では、多くの場合シールド線か同軸ケーブルを使って信号を接続します。何気なく使ってしまうこれらのケーブルについてのあれこれ。


電子計測にシールド線や同軸ケーブルが用られるのは、計測する信号がノイズなどほかからの影響を受けないようにするためや、接続線によって波形が乱れたり大きさが変わってしまうことを防ぐなどの目的があるためです。

計測器の端子が同軸コネクタだから、あるいは信号の接続がしやすいからというのも、もっともな理由かもしれません。


ところで、シールド線も同軸ケーブルも、中心となる線を編組と呼ぶ網状の線や導体箔などでくるみ込んだ形状をしています。

では、シールド線と同軸ケーブルはどこが違うのかというと、

■シールド線は主に低周波の信号を静電的にシールドすることを目的として作られていて、特性はメーカや種類によってさまざまである。

のに対して、

■同軸ケーブルは、本来は高周波の信号を伝送するために作られており、電気的・機械的定格がJISなどの公的な規格によって定められている。

ということになります。

以下は同軸ケーブルを規定したJISの一例です。

JIS C 3501:1993周波同軸ケーブル(ポリエチレン絶縁編組形)
JIS C 3502:1996テレビジョン受信用同軸ケーブル
JIS C 3503:1995CATV用(給電兼用)アルミニウムパイプ形同軸ケーブル


上の定義からすると、低周波の計測にはシールド線を、高周波では同軸ケーブルを使うというのが素直な解釈になります。

しかしながら、同軸ケーブルはシールド線と比べて構造的にしっかりしていて、その特性も明らかであることから、電子計測では低周波においても同軸ケーブルを使うのが一般的です。
(注;高インピーダンスのセンサを使う場合などは、指定されたローノイズのシールド線を使ってください。)

この場合、同軸ケーブルをできの良いシールド線として使っていることになります。

逆に、高周波(高速信号)にシールド線を使うことは、電気特性の面からもお勧めできません。


以下は、計測でよく用いられる同軸ケーブルの特性と名称のルールです。

同じように見える同軸ケーブルでもさまざまな種類があることが解ります。

●同軸ケーブルの仕様

名称 外径
(mm)
特性インピーダンス(Ω)静電容量
(nF/km)
波長短縮率(%)減衰特性 (dB/km)
1MHz10MHz200MHz
1.5C-2V2.975±367672782390
3C-2V5.675±367671240195
5C-2V7.575±367677.625125
1.5D-2V2.950±2100672785420
3D-2V5.550±2100671344220
5D-2V7.550±2100677.326125
8D-2V11.550±2100674.81785
RG58/U5.053.594671342200
RG58A/U5.050102671448230

参考:藤倉電線資料

●ケーブルの名称と略号(例:3C-2V)

名称 3最初の文字PE絶縁体の概略外径(mm)
C次の文字特性インピーダンスの種類を示す  C・・・75Ω  D・・・50Ω
2次の文字絶縁方式を示す          2・・・PE充実形
V末尾の文字Z・・・一重外部導体編組のみ(PVC被覆なし)
V・・・一重外部導体編組+PVC被覆
W・・・二重外部導体編組+PVC被覆
E・・・一重外部導体編組+PE被覆
T・・・三重外部導体編組+PVC被覆
S・・・中心導体より線

参考:藤倉電線資料


仕様項目の中で、特性インピーダンスは高周波信号を扱う場合の重要項目です。
回路や計測器のインピーダンスと一致したものを用います。

テレビ用計測器では75オームのものがありますが、ほかの用途では50オームの計測器が多くなりました。


電子計測では静電容量も気になる部分です。

表では1km当たりの容量が示されていますが、電子計測で通常使用する接続ケーブルは1m内外のものが多いので、表の値をpF/mと読み替えると良いでしょう。

注意したいのは、50オーム系の同軸ケーブルは静電容量が大きいという点です。

計測器の側からすれば、静電容量は少ない方が好ましいことが多いほか、高い入力インピーダンスの計測器を接続する場合は周波数特性に直接影響します。

50オーム系の同軸ケーブルは、75オーム系の同軸ケーブルと比べて中心導体を太くできる、言い換えれば接続ケーブルとして使いやすいのですが、1mで約100pFのコンデンサに等しいことを忘れないでください。

図1: シール線や同軸ケーブルは大きなコンデンサ

減衰特性はケーブルを長く引き回すとき以外は無関係のように思われますが、憶えておきたいのは、周波数が高くなると減衰量が急に増えるという事実です。

これは、ケーブルの表皮効果が原因です。

その結果何が起こるかというと、例えば、オシロスコープなどでパルス信号の立ち上がりを観測する場合に、信号波形が長い尾を引いたように見える(ドリブルアップ現象)ことがあります。

図で、
1は入力波形
2は本来の計測出力
3はドリブルアップ現象によって尾を引いた波形
4は立ち上がりが遅い場合の本来の計測出力
をそれぞれ表しています。

図2:ドリブルアップ現象

シールド線や同軸ケーブルを使う際の注意事項はいくつもありますが、ここでは2点だけ採りあげます。

一点目は、計測中にケーブルを動かさないこと。

これは、ケーブルを曲げることによって静電容量が不規則に変化するために線間にパルス状のノイズが発生する恐れがあるためです。
(ケーブルに蓄えられた電荷量が一定であるのに対して、静電容量が変化するため)

図3:ケーブルを曲げるとノイズ発生

特にインピーダンスの高い計測や微少なパルス信号の計測では重要です。

特に高インピーダンスのセンサを使う場合などは、指定されたローノイズのシールド線を使うよう心がけてください。


2点目は、平衡回路にシールド線を接続しても、効果が期待できない場合がある点です。

高周波で平衡回路側の線路が長い場合は、シールドしたにもかかわらず、電磁波が放射(コモンモード放射)されます。

図4:平衡回路との接続

せっかくのシールド線がアンテナとなってしまうのです。
この場合は、平衡と不平衡の変換を行うか、コモンモードチョークを入れるなど、コモンモード電流を抑える対策が必要です。

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