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デジタル変調方式

デジタル変調方式

携帯電話やBSテレビ放送など、近年の無線通信はデジタルの変調方式が採用されています。


音声信号やビデオ信号をアンテナに接続しても、電波として遠方へ送ることはできません。
そこで、電波としてアンテナから出ていくことができる高周波信号(搬送波)に、音声信号やビデオなどの信号情報を乗せて送り出します。
このとき、搬送波に情報を乗せる操作が"変調"です。
一般に、「変調する」「変調をかける」などと表現します。


搬送波をアナログ信号で変調する方式には、振幅変調(AM:Amplitude modulation)、周波数変調(FM:frequency modulation)、位相変調(PM:Phase modulation)があります。
これらは、連続した正弦波である搬送波の振幅、周波数、位相という三つのパラメータのいずれかを低周波信号で変化させるものです(下式参照)。


次に、デジタル信号で変調をかける場合です。
デジタルの変調は、アナログ変調で変調波形を方形波にした場合と考えることができます。
そして、方形波による変調は、搬送波をスイッチ(key)で切り換えることと同じであることから、デジタル信号で変調する方式は、AM、FM、PMに対応して、ASK(Amplitude shift keying)、FSK(Frequency shift keying)、PSK(Phase shift keying)と呼ばれます。

ASK

アナログの振幅変調器にデジタル信号を入力したとすると、出力は変調信号の1とゼロに対応して、搬送波がオン・オフしたものになります。(図1)
これは、連続した変調波をスイッチでオン・オフするのと同じです。

図1:ASKの基本イメージ

同様に、ASKとは搬送波に1またはゼロを掛けることである、と考えることもできます。
ASKは、シンプルな変調法ですが、伝送路におけるレベル変動によって波形がひずむと復調が困難になり、エラーが増えるなどの欠点があります。

ASK対応するアナログ変調信号波形
振幅変調:AM

FSK

FSKは、周波数の異なる二つの搬送波を切り換えるのと同じです。(図2)
波形の縦軸(振幅)方向には情報を持たないので、伝送路での信号劣化やノイズに強く、非線形の電力増幅器も使用できるなどの特長があります。ただし、二つの周波数を切り換えるということは、周波数の異なる二つのASKがあるのと同じですから、周波数の占有幅はASKの二つ分になります。

図2:FSKの基本イメージ

FSK対応するアナログ変調信号波形
周波数変調:FM

PSK

PSKは、FSKと同様に振幅方向に情報を持たないメリットがあります。
原理的には、位相の異なる二つの搬送波を切り換えることと同じです。(図3)
ディジタルの1と0を位相の0度と180度に対応させるとすれば、搬送波に1または-1を掛けることだと考えることもできます。これは振幅変調と似ています

図3:PSKの基本イメージ

位相の異なる二つのASKがあって、片方が1の時、もう一方は0になると考えれば分かりやすいかもしれません。従って、PSKはFSKのような周波数占有幅の拡がりを生じません。

PSK対応するアナログ変調信号波形
位相変調:PM

多値デジタル変調

デジタル変調の基本は、1と0を方形波に置き換えて変調することでした。
しかしながら、この方法では1ビットずつの転送しかできません。
そこで、一度に2ビット以上を送るのが多値デジタル変調です。
 
多値にする第一の手段は、正弦波の直交性の利用です。
sin(正弦波)とcos(余弦波:正弦波と90度位相が異なる)は、合成しても正弦波形でありながら、各々の成分は独立していて、個別に取り出すことができる、という性質を利用します。

例えば、図4のようにsinを横軸、cosを縦軸にして、各々をPSKすると、4つの状態が存在し、それらから、sinとcosの値を個別に知ることができます。
つまり、一度に2ビットの情報を送ることができます。
この方式をQPSK(Quadrature PSK)と言います。
 
なお、4つの状態とデジタル2ビットの対応関係は、どのように定めてもかまいません。
一般的には、受信側で誤って隣の値と判断したときに、デジタル値に大きな差がでないように割り当てます

図4:QPSK

因みに、図4では、通常のバイナリの順序に対して、10と11の位置を逆にした"グレイ符号"になっています。


QPSKは、結果的に[搬送波の位相を90度ずつシフトした信号]になっています。もし、位相をもっと細かく制御(検出)できるならば、更に多くのビットを一度に送ることができるはずです。
図5は45度ずつのシフトにした場合で、8相PSK(8PSK)と呼ばれるものです。

図5:8相PSK

QPSKや8相PSKはPSKを多値に拡張したものですが、多値への拡張はASKでも可能です。
図6はsinとcosの直交した2つの搬送波を使い、さらに振幅を1とゼロではなく、4つの値にして、合計16(4ビット)の情報を一度に送る16QAM(Quadrature AM)のコンスタレーションです。
 
PSKは円周上に符号点が配置されますが、QAMの符号点は四角形に並びます。振幅の段階をさらに増やした256QAMなどもあります。
なお、図6でI,Qとあるのは、sinつまりゼロ度の成分(Inphase) と、cosつまり90度の成分(Quadrature)の意味です

図6:16QAM

多値変調は、位相や振幅を多値で表現しているので、受信側での検出は2値と比べて難しくなるため、伝送路には高い品質が求められます。

二次変調

搬送波に情報を乗せるのが変調ですが、携帯電話をはじめとする実際のアプリケーションでは、比較的低い周波数の搬送波に対して予め変調を行い、その出力で最終的な周波数の搬送波をさらに変調することがあります。
この場合、初めの変調を一次変調、後の変調を二次変調と呼びます。
これまでに説明した変調は、一次変調に用いられる方式です。
 
近年のアプリケーションに使われる二次変調には、周波数拡散やOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)などがありますが、これらは、周波数帯域の有効利用(多重性)や対雑音性、それに秘匿性などが重要視された方式です。
例えば、次世代携帯電話の W-CDMAでは、一次変調にQPSK、二次変調には周波数拡散(DS-SS)が採用されています。

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