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インピーダンスマッチング

インピーダンスマッチング

高速度波形の観測や高周波電力の測定などではインピーダンス整合をします。

無線機器の回路やアンテナ接続、それと高周波測定の多くではインピーダンスマッチングを必要とします。
インピーダンスマッチングとは、ひとことで言えば「信号を送り出す側のインピーダンス値と信号を受け取る側のインピーダンス値を同じにすること」です。


電気信号の受け渡しをする場合、送り出す側の出力インピーダンスはゼロ(理想的電圧源)あるいは無限大(理想的電流源)ではなく、必ず有限のインピーダンスを持っています。
これを出力インピーダンスあるいは信号源インピーダンスといいます。

同じように、信号を受け取る側も必ず有限のインピーダンスを持ち、入力インインピーダンスと呼ばれます。


インピーダンスというとわりにくいかもしれませんが、直流では抵抗と考えて差し支えありません。

直流の場合の様子を図に示すと図1のように表すことができます。
図で、Rsが信号源の出力インピーダンス、RLは負荷の入力インピーダンスです。

また、図1の下の式はRLの消費電力を求める式です。

図1:入出力のインピーダンスと負荷の電力

今、Rsを固定して、RLを変化させたとき、RLが消費する電力はどのように変化するでしょうか?

その様子を表したのが図2です。

図2ではVが10ボルト Rsは50オームのときの値を示しています。
電力は緩いカーブを描きますが、電力が最大になるのは、RLが50オーム、つまりRs=RLとなったときであり、このときの消費電力はRsの消費電力と同じになります。

図2:V=10ボルト Rs=50オームのときのRLの電力

ところで、RLの電力というのは、負荷の電力であり、負荷が信号源から取り出す(受け取る)電力ということです。

そして、その電力が最大になるのは、負荷のインピーダンスが信号源のインピーダンスと同じになったときであることが解りました。
つまり、電力の受け渡しをする場合には、信号源と負荷のインピーダンスを同じにすると最も効率が良くなるというわけです。

これが、インピーダンスマッチングが必要な第一の理由です。
ここでは、直流の時について説明しましたが、これを交流に拡張しても結果は同じになります。

例えば、送信機からアンテナへ電波を送り出す場合には、送信機の出力インピーダンスとアンテナのインピーダンスを一致させて、最大の効率で送り出すようにしています。


インピーダンスマッチングが必要なもう一つの理由は、信号の反射です。反射は高周波(電波)や高速のパルス信号を伝送する場合に顕著になる問題で、直流回路では問題になることはないのですが、電子計測では上記の電力効率よりも反射の問題からインピーダンスのマッチングが必要になろことが多いものです。


今、図3のようにケーブルの左側から高速なパルスを送り出して右側の(負荷)抵抗で受け取るとします。

このとき、信号源のインピーダンスと負荷のインピーダンスが一致しないと、右端まで伝わった信号の一部が右端で反射して左側に戻って来てしまい、その反射波が再び左端で反射して右側へ・・・という現象が起きます。
反射が起こると、測定に大きな誤差が生じます。パルス信号であれば波形に大きな乱れを生じます。

図3:パルス信号の伝送

正弦波のような連続信号では、反射が起こると、定在波といって伝送路上に振幅の大きな部分と小さな部分ができます。

ケーブル上の測定位置によって測定値が大きく異なってしまうのです。

したがって、高速のパルスや高周波信号の計測では、信号源と負荷のインピーダンスを一致させて反射が起こらないようにしなければなりません。

図4:反射と定在波

実は、別項の入力インピーダンスのところで、信号源が電圧源のときは、計測器は出来るだけ高いインピーダンスのものを使わないと、負荷効果のために測定に誤差を生じるという説明をしています。

このことは、インピーダンスマッチングと矛盾します。理論的にはどちらも正しいのですが、どっちの理論を採用するかは、どっちの誤差が大きいかで決まります。

ごくおおざっぱに言うと、低周波では高いインピーダンスで受けるのが良く、高周波や高速パルスではインピーダンスマッチングをするのが良いでしょう。

では、何ヘルツからインピーダンスマッチングかというと、残念ながら一概には言えません。
反射は伝送路の長さと大きな関係があるからです。ケーブルの長さが信号の波長と比べて無視できないときは反射を考慮する必要があります。

図5:高速パルス信号をハイインピーダンスで受けると・・・

もうひとつ、反射で重要なのは、伝送線路のインピーダンスです。伝送線路、つまりケーブルのインピーダンスも、信号源のインピーダンスと一致させる必要があります。

インピーダンスを直流抵抗と同じモノと考えると、銅線で出来たケーブルが何十オームもの抵抗を持つことはおかしなことです。
しかし、ケーブルのインピーダンスというのはケーブルの単位長さあたりのインダクタンス(L)と静電容量(C)で決まるものであって、テスタで抵抗を測っても求めることはできません。

結論を言うと、インピーダンス値の解ったケーブルを使います。
たとえば、RG58という名前のケーブルは50オームであり、3C2Vという名前のケーブルは75オームです。


測定の際に犯しやすい誤りに以下のような場合があります。

図6はパルスジェネレータからの信号を被測定物に接続して、測定物への入力波形をオシロスコープで観測する、といった例です。

この場合、被測定物をインピーダンスマッチングさせてもオシロスコープへ行く線路で反射を生じ、正確な測定は出来ません。
どうしても波形を見たいときは、専用のカップラを使って電力を二分させた後に、測定物とオシロスコープ両者端で整合させます。

図6:犯しやすい誤り

一方、図7は反射による測定の誤差(波形の乱れなど)をアッテネータで軽減させる例です。
この場合アッテネータは負荷端に入れます。
こうすると、信号も減衰しますが、反射波は反射の回数だけアッテネータを通るので、信号と反射波の比率が大きくなって、良好な波形を得ることができます。

図7:アッテネータを使って反射を軽減

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