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玉手箱

アイパターンとコンスタレーション(その1)

電気信号の挙動を視覚的にとらえたいときには、「波形」や「スペクトラム」を見るのが一般的です。
ここでは、複数の信号間の関係性を知りたい場合などに適した他の表現法を考えます。


アナログ信号の時間変化、つまり「波形」を観測するときにはオシロスコープが使われますが、複数あるいはパラレルのデジタル信号にはロジックアナライザあるいはミクスドシグナルオシロスコープのロジックアナライザ機能を使うのが便利です。

ロジックスアナライザ(ロジックスコープも含む)は、オシロスコープと同様に横軸は時間、縦軸はレベルとした信号観測装置です。
多チャネルの信号を共通の時間軸上に一括表示させることで各信号の遷移タイミングやロジック(論理)判定に用いられます。
ロジックスアナライザは基本的に、デジタル信号は方形波であって論理値(ロジックレベル)を持つことを前提にしており、縦軸はアナログレベルの他に1/0やH/Lといった論理値とすることもできます。
ちなみに、取り込まれたデジタル信号をデジタルデータに復号化するところまで行った上で解析するものはプロトコルアナライザと呼んで区別されますが、両者の機能を併せ持つものが多数あります。

図1: ロジックアナライザの例 写真はTFF( テクトロニクス)

一方、デジタル信号であっても、信号の速度が回路の周波数帯域など性能限界ギリギリであったり、信号のレベルが小さくノイズを含むようになったりしてくると、信号波形は理想的な方形波から次第に離れてゆき、1かゼロかが不確定になってきます。

そうした場合には、「シグナルインテグリティ」つまりデジタル信号をアナログの信号として捉えた統計的な信号品質評価が必要になってきます。

この場合は、高速・広帯域のオシロスコープやシリアルデータアナライザなど専用の解析器を使うことになります。

図2: 高速デジタル信号の理想と現実

ところで、高速デジタル信号はクロックパルスでもない限り、1とゼロとが不規則に変化する長大な信号です。

大容量のメモリを持ったオシロスコープを使えばこうした信号も一度の信号取り込みで捕捉できます。
しかしながら、画面に表示できるのは取り込まれた長大な信号のごく一部分に過ぎず全体を見渡すのには無理があります。

これに対して、信号の1~2周期分ずつを切り出しオシロスコープで連続して取り込むと図3 のように波形が重なり合って見えます。
こうして得られるデジタル信号の重ね書き波形を「アイパターン」と呼びます。

図3: デジタル信号の重ね書き

アイパターンは、アイダイアグラム、アイクロスなどとも呼ばれます。
ちなみにアイパターンのアイは「目玉(eye)」のことです。
図3で信号をもっとたくさん取り込むと、その波形は図4のようになり、目玉のように見えるからです。

図4: アイパターン

実際にデジタル信号を重ね合わせて表示させると、理想の方形波に近い良好な信号であれば目玉がはっきり開いて見え、方形波から外れるに連れて目玉が閉じたように見えます。
したがって、目の枠の広がりと目玉の開き具合で信号の忠実性を評価できます。

具体的には、信号に対して回路や伝送路の周波数帯域が十分確保されているか否か、ノイズやジッタの量はどのくらいか、信号が正しいデータ点を通過しているか、といったことがひと目で分かるというメリットがあります。
同じオシロスコープによる波形表示ではあっても、単に長大な方形波列を表示させるよりもアイパターンは高速デジタル信号の品質評価法としてわかりやすく、優れた方法です。

図5: アイパターンによる信号の評価例        同じ信号を異なる伝送路を通過させて比較したもの

その利便性から、USBやEthernetなどでは規格の中で転送される信号のアイパターン測定が盛り込まれ、デバイスや回路上の信号が規定された範囲(アイ・マスク)に収まることを要求しています。
このための測定試験は「マスクテスト」と呼ばれます。

図6 アイパターンとアイマスクの例 (写真はアンリツ)

アイパターンは簡単でわかりやすい評価法ですが、誤った測定をしてしまう危険がないわけではありません。

一例としては、アイパターンは波形の重ね合わせ表示ですから、波形を重ね合わせる範囲とタイミング( 重ね合わせの位置と周期)が異なると見え方(アイの形)も異なることが挙げられます。

たとえば、重ね合わせのタイミングと信号の繰り返し(クロック)との間にズレがあるとパターンが横に拡がって見え、ジッタを多く含むように見えてしまいます。

また、使用する信号のデータパターンによってもアイは異なります。
オーバシュートやリンギングなど波形としての振る舞いは、前後する符号などによっても異なるからです。

したがって、アイパターンの測定に際しては重ね合わせのもととなるクロック( トリガソース) をどこからどのようにして得るか、どのようなデータパターンを使うかなどについて注意しなければなりません。

ちなみに、高速のシリアル信号では信号がクロックを内包していてクロックラインの無いものがあります。
その場合は信号からクロックを取り出す「クロック再生」の工夫が必要になります。

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