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制御システムとフィールドバス

制御システムとフィールドバス

工場やビルの内部を這い回る多くの電線を整理して効率的な制御や管理をするための標準化が進んでいます。


工場やビルの内部を這い回る多くの電線を整理して効率的な制御や管理をするための標準化が進んでいます。

自動車を初めとする機器類や鉄や石油などの原材料など、工場でモノを造る現場では、機械加工や組み立てなどのファクトリーオートメーション(FA)と液体や粉体を制御するプロセスオートメーション(PA)が全体の効率と調和を実現しています。

また、近年では、オフィスの空調管理などビルオートメーション(BA)も発達しています。

そして、FAやPA,BAの世界全体を支えているのは計測と制御と管理の技術です。


図1は、工場生産システムの典型を示したものです。

全体は三つの階層に分けられ、最上位の情報レベルでは、商品の受注や材料調達・工程管理などの基幹情報システムと連携が保たれています。

図1:工場生産システム

中間の監視と制御は工場やプラントでのセクション毎にひとつのシステム単位があって、受け持ちセクションの機器を制御したり監視したりしています。

一番下の層は、ヒトではなく、実際の機器および人と機器とのインタフェースです。

温度や流量などのセンサ、コントロールバルブ、サーボモータなどが、PLC(Programmable Logic Controller)やDCS(Distributed Control System)などの専用コントローラによって制御されています。


今回は、このフィールド機器とシステムに焦点を当てます。

図2は、コントローラとフィールド機器の配線の様子を示したものです。

通常はひとつのフィールド機器に対して一本(一組)のケーブルが必要です。

結果として、工場の中はおびただしい数のケーブルが這い回っています。

もう一つ困ったことがあります。

それは、機器間の接続仕様がメーカや機種によって異なるという問題です。

機器の自由な組み合わせや組み替えができづらい状況です。

図2:フィールド機器接続

さらに、基本的な事柄として、フィールド機器の多くがアナログ制御であるという事実があります。

これらは、4-20mAカレントループという伝統的な方式で、コントローラからアナログ制御されています。

特にPAの分野では流量や温度などのアナログ信号が行き交う機会が多くなります。


しかし、IT技術の進歩に対して、フィールド機器の制御だけが独立して存在し続けることはできません。

次第に、シンプルでかつオープンなデジタルネットワークを世界中で規格統一して利用していこうという気運が高まり、機器メーカーや事業者団体からさまざまな方式の規格が提案されました。


図3は、各提案にほぼ共通する基本イメージです。

個々のフィールド機器へ並列配線することを無くし、機器間を簡単なケーブル(バス)で自由に結びます。
コントローラへの配線も一本です。もちろん、扱われる信号はデジタル(データ)です。

これらは、「フィールドネットワーク」とか「フィールドバス」などと呼ばれます。

ただし、フィールドバスという呼び名は、後述する固有名詞としての意味を持つ場合があります。

ここでは、一般名詞として広義のフィールドバスです。

図3:フィールドネットワーク

重要なことは、規格の内容とその利用がオープンであることです。オープンでなければ自由な機器接続は実現しません。


情報分野におけるデジタルネットワークとしては、Ethernetを使ったLANやインターネットが普及しています。

FA,PAの世界でも図1の情報段階(コンピュータレベル)では、こうした情報ネットワーク技術が使われています。

フィールドネットワークもこうしたテクノロジーと調和することは必須となっていますが、情報ネットワークとしてのLANに直接組み込まれることは少し問題があります。


なぜなら、フィールド機器の監視と制御には、ひとつに機器がアクションを起こした場合に、直ちに応答が得られるという「リアルタイム性」が求められるからです。

例えば、流量をバルブで制御する場合に、流量が増加したときは直ちにバルブを閉じなければなりません。

このとき、「ネットワーク上のデータの流れが混雑していたので、できませんでした」というわけにはいかないのです。

このため、フィールドネットワークではリアルタイム性が厳重に規定されています。

また、エラー訂正などデータの信頼度が高いことや、工場環境を考慮した高い耐ノイズ性能なども求められます。

フィールドネットワークは、従来の並列配線によるアナログ制御を一新する技術です。

ところが、現実には情報ネットワークのように同一の技術規格で世界中が同調して世の中が一変するというところまでは普及していません。

特にPAで普及が遅れているとも言われています。


信頼性と安全を最重視するFA,PAの分野では、急激な変革は好まれないという土壌も背景にありますし、実行する場合は工場まるごと一気に変えなければならないという現実的な問題もあります。

しかし、爆発的な普及が起こらない第一の原因は、規格そのものにあります。

世界中のメーカとユーザが従う決定的なスタンダードが見つからないのです。

実際にはさまざまな規格が各々のメリットを主張するかっこうで並立しています。


図4は、現在提案もしくは実用化されている主な規格を羅列してみたものです。

IEC61158は、公的な国際規格ですが、十年以上の年月をかけて検討した末に、8種の方式を容認するという結果に終わっています。

図4:フィールドネットワーク規格

まとまらない理由としては国や企業の思惑が見え隠れする部分もあります。

しかしそれ以上に、各規格がネットワークの階層とどのような関係を持つか、どのようなアプリケーションを想定しているかなど、それぞれに目的の違いがあるのです。

また各規格が協調し合う関係にあるモノもあり、一概に比較したり優劣を付けるのが難しいということもあります。

このようにさまざまな事情はあるものの、FA,PA,BAにおけるフィールドネットワーク化のトレンドは必然であり、今後普及が加速されるでしょう。

EthernetやTCP/IPなど、情報分野のテクノロジーとの融合も一段と加速することが予想されています。




以下に日本で多く採用されている規格の概要をまとめました。
(順不同 個人的な見解を含みます)

PROFIBUS
ドイツで開発され、DIN規格を経て発展した。
欧州規格(EN50170)などのほか中国の国家規格などとしても採用されている。
FA,PA共に応用でき、対応製品も多い。

日本プロフィバス協会ホームページ
Foundation Filedbus
米国のISA(Instrument Society of America)に端を発しFischer Rosemount(当時)社などが中心となって始まった。
PROFIBUSと同様に2線式の信号・電源供給と防爆安全が考慮されており、PA分野で発展が期待されている。
一般名詞としてのフィールドバスとの混同に注意

フィールドバス協会ホームページ
DeviceNet
米国のAllen-Bradley社によって提唱された。CAN(Controller Area Network)の拡張セットとしての位置付け。PLC(Programmable Logic Controller)を中心に据え、接点信号を多用するFA分野の生産工程を中心に普及。
半導体業界標準規格のSEMIスタンダードにも認定されている。

ODVA JAPANホームページ
CC-Link
三菱電機が提唱した規格で、日本で多くの実績を誇る。

CC-Link協会ホームページ
OPCN-1(旧JPCN-1)
JEMA(日本電機工業会)によって策定された。JIS B3511 3512としても規格化されている。
上位層のFL-net (OPCN-2)と深い関連を持つ。

Lon-Works
Echelon社が提唱している規格。
独自のニューロンチップを使う。
BAの分野で実績が多いとされる。

ECHELON社のホームページ

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