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玉手箱

接地抵抗の計測法

一見では不可能と思える計測でも、工夫次第で計測できる可能性があります。
ここでは、簡単にはできないと思える計測の例としてひとつに「接地抵抗」を採り上げ、どのようにすれば計測できるかを考えます。

数ある電子計測の中で抵抗値の計測は比較的簡単であるとされています。
電子回路で使用する抵抗器の値などは、両端にテスターやデジタルマルチメータ、LCRメータなどの計測器をつなぐだけで直読できるからです。
ところが、同じ抵抗でも簡単には計測できないものがあります。
例えば、電池に負荷が接続された状態で、電池の内部抵抗をデジタルマルチメータやLCRメータ計測することはできません。
電池の電圧が計測器に加わってしまうこともありますが、電池の両端を計測したのでは、電池の内部抵抗と負荷抵抗が合算されて計測されてしまうからです。

図1:抵抗器の計測は簡単

また、オーディオアンプの出力抵抗などもテスターで簡単に計測、というわけにはいきません。


同様に、簡単には計測できない抵抗のひとつに「接地抵抗」があります。
接地抵抗とは、避雷針や機器設備などの保安接地などの「アース(Earth)」端子が大地との間に持つ抵抗のことです。
現実のアースは、銅板や金網、金属棒などを地中に埋め、そこから電線を引き出します。
大地の伝導率が金属のように高ければ接地抵抗はゼロです。
もし、機器が完全に接地されていれば、ACラインに接続された機器が筐体との間で絶縁不良を起こした場合などにも電流はアースを通じ全て大地に環流するので、感電せずに済みます。
(電子機器の絶縁と耐圧)参照
このためのアースが保安接地というわけです。


しかしながら、実際の接地抵抗はゼロではなく、有限の値(数Ω~数kΩ程度)を持っています。
もし、接地の抵抗値が大きいと、万一の際に大地に環流する電流と接地抵抗で電圧降下を生じ、機器の電圧が上がって感電する危険があります。〈図2〉

このため、接地抵抗は十分に低いことが要求され、法令でも設備の種類に応じた接地抵抗の上限が定められています。
(例えば電気事業法 電気設備技術基準によるD種(第3種)の場合100Ω以下)
こうしたことも含め、安全確保の上で抵抗値の低いアースが必要であり、そのためには実際の接地抵抗を計測して確認する必要があります。

図2:接地抵抗が大きいと感電の危険

ところが、実際に接地抵抗を計測しようとすると、簡単には測れないことに気づきます。
抵抗は2点間の値を計測するわけですが、計測できる電極は機器や設備の接地端子ひとつしかないからです<図3>。
計測器で測りたくても、対向するもう一方の電極が存在しないわけです。
接地抵抗を計測するのは不可能にも思えます。

図3:どうやって測る?(計測器をつなぐ電極がひとつしかない)

この対策として、計測したい接地のほかに、もうひとつの接地(補助接地)を設け、この2点間の抵抗を測ることがまず考えられます。
ですが、この方法では求めたい接地抵抗(Re)と補助接地の抵抗(Rc)が合算された値しか求まりません。<図4>
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そこで、何とかして正しい接地抵抗を計測しようと、さまざまな方法が考案されてきました。

図4:補助接地電極を設ける方法

第一は、補助電極を二つ、計三つの電極を設け、各電極間の抵抗値から接地抵抗を求める方法です。
<図5>に示すように求めたい接地点(図の(1) )から離れた2点に補助電極を地中に打ち込み、全体で大きな三角形を構成します。
そして、各電極間の抵抗(計3点)を計測します。
各計測値は、それぞれ2点の抵抗の合成値ですが、3つの値が分かれば、計算によって求めたい接地抵抗(Re)を求めることができる、というものです。
この方法は古くから知られ、抵抗の計測にコウラッシュ・ブリッジ (Kohlrausch Bridge)が用いられたことからコウラッシュ・ブリッジ法などとも呼ばれてきました。
ただし、この方法にコウラッシュ・ブリッジを用いることは必須ではありません。
コウラッシュ・ブリッジ法は、校正などの精度を必要としない電極を二つ設けるだけで、未知の抵抗を求めることができる巧妙な計測法と言えます。

図5:3カ所の抵抗値から計算する方法

しかしながら、各電極を三角形に配置するには、接地点が広い庭の中心のような場所である必要があり、そのような条件下にある接地点は実際には少ないものです。
また、ひとつの値を求めるのに計測を3回行うのも効率的とは言えません。

賢い方法ではあるのですが、実際の現場での計測には応用しづらいことなどから、採用されることは少なくなっています。
なお、コウラッシュ・ブリッジというのは<図6>のように摺動抵抗抵抗のスライダを動かしてブリッジのバランス点を探る抵抗計測器です。
回路的には同図の右に示した一般的なブリッジと同じです。
ただし、計測の信号源には交流(低周波発振器)を用います。
直流では接地電極と土によって分極を生じ正しい計測ができないためで、これはほかの接地抵抗計測法についても同じです。
ちなみに、コウラッシュ・ブリッジでは可聴周波数の発振器を用い、ブリッジの検流計の代わりにレシーバを入れて人の耳でバランス点(音が最も小さくなる点)を検出するといった工夫も盛り込まれていました。

図6:コウラッシュ・ブリッジ

接地抵抗を測る第二の方法は、電圧降下法などと呼ばれるものです。
ただしコウラッシュ・ブリッジと異なり各電極を直線上に配置します。
さらに1回の計測で接地抵抗が求まります。

図7:3電極電圧降下法による接地抵抗計測

直線上であれば、現場においても条件を確保しやすく、計測も1回で済むことから、接地抵抗の最もポピュラーな計測法となっています。
市販の「接地抵抗計」も多くがこの方法を採用しています。<図8>

図8:接地抵抗計の例  左は補助接地用のアンカー(写真は共立電気計器.)

3電極法の計測原理を<図9>に示します。
まず定電流源から被計測接地(図のE)と対向する電極(図のC)に電流(I)を流します。
(Iを計測で求めても良い)
次に被計測接地両電極の間に打ち込んだ電極(図のP)間の電圧(Vx)を計測します。

このとき、高い入力抵抗で電圧を計測できれば、電圧計測に伴う電流は無視できます。

つまり、接地抵抗の両端電圧を測るのと同じになります。
従って、電流(I)と電圧(Vx)から被計測接地抵抗Reが求まります。

図9:電極法の計測原理

ただし、<図9>からも明らかなように、3電極法では各々の接地抵抗(ReとRc)が分離していると見なせるまで被計測接地と対向電極の距離が十分に離れていることと、分離された中点の電位を検出できる位置に電圧計測電極(P)が打ち込まれることが条件になります。
その様子を被計測接地点からの距離と電位(電圧)の関係で示したのが<図10>です。

被計測電極と対向電極の周囲では抵抗は三次元的に分布するため、電位はなめらかな上昇カーブを描きます。
両電極の距離が離れてくると、その中央部では接地抵抗と計測電流に伴う電圧降下が無くなり、電位は一定になります。
従って、電圧計測電極は計測する電位が位置を前後してもほぼ一定となるような地点に打ち込まれていることが大切です。
実際には計測地点の土質などによりますが、各電極間の距離を5~10m以上離す必要があります。

図10:被計測接地点からの距離と電位(電圧)

上に挙げた二つの方法は、どちらも補助電極を土中に打ち込む必要がありました。
一方、近年では接地点の周囲がコンクリートやアスファルトで舗装されるなど、補助電極の打ち込みが難しい機会も増えています。
このため、例えば商用電源ラインの接地点など抵抗が既知もしくは十分に低いことが明らかな接地が存在する場合は、その接地と被計測接地間での抵抗を計測して、既知の抵抗値を差し引くといった簡易的な方法で済ませる場合もあります。


さらに、補助接地を用いずに接地抵抗を測る方法も考えられています。

その一例として高周波での共振を利用した方法を<図11>に示します。
この方法は、補助電極を土中に打ち込む代わりに10~20m程度の電線を地上に這わせるだけで接地抵抗が求まります。

図11:補助接地を埋め込まない計測法

計測のタネ明かしを<図12><図13>に示します。
長い線を地上に這わせると線と地面との間でコンデンサ(C)が形成されます。
また、線材にはインダクタンス分(L)が存在します。
ここで、既知の抵抗(Ro)を通じて発振器(OSC)から1MHz程度の高周波信号をあたえると、等価回路は図12として表わすことができます。

図12:図11の等価回路

このとき、発振器の周波数がCとLとで形成される直列共振回路の共振周波数と一致する、CとLは打ち消されるので等価回路は<図13>の回路と同じになります。
従って、共振時の発振器出力電圧(Vosc)と端子電圧(Vout)を計測すればRoは既知ですから、Reを求めることができます。

図13:共振時の等価回路

これまでに、接地抵抗の計測法としてコウラッシュ・ブリッジ法、3電極法、そして高周波の共振を利用する方法を紹介してきました。
何れも、一見では不可能と思えた接地抵抗を実際に計測できる賢い方法です。
これらは、原理的に難しいと思える計測でも、工夫次第で計測できるようになるということを実証する良い例でもあります。
電子計測器が発達したことで、さまざまな計測が簡単にできるようになりましたが、計測器に頼り切った計測は上手な計測とは言えません。
計測のやり方を工夫して、より正しい値を得ることが電子計測の妙味と言えるでしょう。

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