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部品定数とE系列

部品定数とE系列

電子回路で使用される部品の定数は、1 , 2 , 3といったキリの良い数値ではなく、端数のある値になっています。


普段、電子計測器を使って計測をする場合に、計測器内部の電子回路や回路素子の常数を気にする必要はありません。

しかしながら、計測の対象となるセンサ出力などを計測器に接続するために、簡単な回路を組まなければならないことはあるかもしれません。

その場合は、計測器の取扱説明書や使用するICのデータシートなどに示された回路図で指定された部品を入手して組み立てることになります。

ICのデータシートなどに示された定数設計の式を基に自分で部品の定数を計算することもあるでしょう。


その時、気づくのは、抵抗の値やコンデンサの容量値などが、1 , 2 , 3といったキリの良い数値ではなく、端数のある値を採ることです。

例えば、図1は手元にあったA/DコンバータICの推奨回路図の一部ですが、指定された抵抗値の中には39kΩ、9.1kΩなど半端とも思える数値が並んでいます。

図1:電子回路の一例 その1

同様に、図2はパソコンのマザーボードの電源付近の写真ですが、コンデンサの値は3000μFではなく3300μFですし、耐圧も6.3Vや16Vという不思議な値です。

図2:電子回路の一例 その2

実際に、誤差1%級の抵抗の場合、1kΩ(1.00kΩ)と2kΩ(2.00kΩ)の抵抗はありますが、3kΩ(3.00kΩ)、4kΩ(4.00kΩ)、5kΩ(5.00kΩ)といった抵抗は存在せず、例えば4.99kΩの次は5.11kΩです。

設計式に従って5.00kΩを得て、パーツショップに注文したとしても、「該当する値は無い」といって断られてしまうことになります。

電子回路で使用される部品の定数は、何故このような端数を持った値になるのでしょうか。


電子部品の値は、ほとんどのものがJISなどを初めとする公的な規格で定められています。

部品を作る側も使う側も、値が標準化されていた方が好ましいからです。

例えば、JIS C 5063では抵抗器およびコンデンサの標準数列を定めています。

一部を抜粋すると、

1.0 → 1.2 → 1.5 → 1.8 → 2.2 → 2.7 → 3.3 → 3.9 → 4.7 → 5.6 → 6.8 → 8.2→

といった具合です。

1に近い数値では値が混んでいますが、数値が大きくなるに従って数の距離が遠くなっています。

2,3,4,5といったキリの良い数字は見あたりません。


実は、これらの数列は電子部品の値の誤差とバラツキを考慮した値になっています。

今仮に、部品の精度が±20%だとします。

この場合、1という値の部品は0.8から1.2の範囲のいずれかの値を持ちます。

一方、10という値の部品は8から12の範囲ということになります。

当たり前のことですが、同じ±20%の部品でも、1と10では誤差の範囲は10倍異なります。(図3)

図3:±20%の誤差範囲

次に、値の数列を 1 → 2 → 3 ・・・ 8 - 9 - 10というキリの良い値にしたら、どうなるでしょう。

それを示したのが図4です。

図4:数値を均等(等差的に)配置した場合

こうすると、1と2の間には空きができます。

他方、7-8-9といった辺りでは誤差の範囲が大きく重なり合ってしまいます。

これでは7-8-9と別々に存在する意味がありません。


そこで、±20%を維持したままで、誤差範囲が重なり合わないように数値を選んで配置したのが図5です。

図5:誤差範囲が重ならない数値配列

この時の数列は

  →1.0 → 1.5 → 2.2 → 3.3 → 4.7 → 6.8 →

となります。

抵抗値を例に採ると、

→1.0kΩ → 1.5kΩ → 2.2kΩ → 3.3kΩ → 4.7kΩ → 6.8kΩ →

と並んだその先さらに

→ 10kΩ → 15kΩ → 22kΩ →・・・

という繰り返しで続くことになります。


この数列は、等比数列です。

±20%の場合、1~10までは6個の数列でカバーできるので、10の6乗根(凡そ1.468)を求めて、それをn回掛けて行けば求まります。

実際に用いられている値は、誤差の大きさを勘案して、これを丸めた値になっています。

さらに、各値は国家的・世界的に統一する必要があるので、規格では数表の形で定められています。

こうして決定された数列は「E系列」と呼ばれています。

数列は、誤差の大きさによって異なるので誤差の大きさ毎に表が定まっています。

±20%の場合は1から10まで6個の数字でしたので、E6系列と呼びます。

同様に、±10%の場合は12個でE12、±5%では24個でE24となります。

また、同じ±20%でE3(1 → 2.2 → 4.7 → 10)というのも規定されています。

E3はE6の数列をひとつおきに採ったものです。

実は、E6はE12をひとつおきにしたものであり、そのE12はE24をひとつおきにしたものになっていて、結局のところE3~E24はE24が基になっています。(図6)

E24E12E6E3
許容差± 5%許容差± 10%許容差± 20%許容差± 20%
1.01.01.01.0
1.1
1.21.2
1.3
1.51.51.5
1.6
1.81.8
2.0
2.22.22.22.2
2.4
2.72.7
3.0
3.33.33.3
3.6
3.93.9
4.3
4.74.74.74.7
5.1
5.65.6
6.2
6.86.86.8
7.5
8.28.2
9.1

図6:E24~E3系列


E系列にはさらに、E48、E96、E192があります。

細かい表になるので、ここでは使う機会の多いE96(±1%の抵抗などに適用)を掲げておきます。(図7)

因みに、E48~E192ではE192が基本になっています。

E96
100162261422681
102165267432698
105169274442715
107174280453732
110178287464750
113182294475768
115187301487787
118191309499806
121196316511825
124200324523845
127205332536866
130210340549887
133215348562909
137221357576931
140226365590953
143232374604976
147237383619 
150243392634 
154249402649 
158255412665 

図7:E96系列


さて、これまで、抵抗やコンデンサの値はE系列に従うこと説明してきました。

ところが、始めに写真で示したコンデンサの耐圧は6.3Vや16Vでした。

16はE24に見つかりますが、6.3という値はE系列にありません。

耐圧はE系列のように誤差から定められるべきものではないので、E系列を用いることは好ましくないからです。

ただ、回路設計上のニーズからは、品揃えとしてE系列と同様に等比数列的であった方が好ましいことに変わりありません。

こういった場合には、1から10までを5個あるいは10個などのキリの良い個数でカバーする数列が用いられます。

例えば、1から10までを5個でカバーするようにすると、その数列は

  1.00 → 1.60 → 2.50 → 4.00 → 6.30 → 10.0

となって、16(1.6)や6.3が出てきます。

これらは「標準数列」と呼ばれ、E系列と同様にJISなどで標準化されています。

この場合、規格上での名称は、EではなくRを冠します。

上の例では数値5個で構成するのでR5です。

JISではR5のほかに、R10,R20,R40,R80なども規定されています。



参考:
JIS C 5063  抵抗器およびコンデンサの標準数列
JIS Z 8601  標準数
JIS Z 8401  数値の丸め方

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