計測器・測定器・パソコン等IT機器のレンタル、
リース、中古機器販売、校正受託ならお任せください

玉手箱

インピーダンスの計測と計測器 (その1)

インピーダンスを正確に計測するためには、計測対象や条件毎に最適な計測法と計測器を選択する必要があります。


非電気・非電子系の人々にとって、(電気の)インピーダンスは、理解しにくい概念だと言われていますが、ここでは、「インピーダンスとは何か」という議論ではなく、実際にインピーダンスを求める、インピーダンス計測の方法と計測器について話を進めます。


インピーダンスは、電気・電子工学における最も基本的なパラメータのひとつです。

インピーダンスは交流における電圧と電流の比としてシンプルに定義されます。

しかしながら、実際にインピーダンスを計測するには、計測の条件によって考慮しなければならないいくつもの問題があって、それぞれに最適な計測法が存在すると共に、使用すべき計測器も異なります。


図1はインピーダンス計測の対象物と計測条件をまとめたものです。

まず、計測する周波数によって、計測法は異なります。

また、計測する対象物が、コイルやコンデンサのような単体部品なのかそれとも多くの部品が組み合わさった回路網なのか、といったことでも用いる計測器が異なります。

図1:インピーダンスの計測条件

次に、図2と図3はインピーダンス計測の二つの原理を示しています。

図2は置換法と呼ばれるもので、予め正確な値が分かっている素子をリファレンスとし、計測対象と同じかまたは一定比率の応答を得ることで、値を知る方法です。

図2:置換法によるインピーダンス計測

一方、図3はインピーダンスの定義にしたがった計測法です。

対象に加わる電圧と流れる電流からインピーダンス値を算出します。

なおインピーダンスは複素数ですので、電圧と電流は振幅と共に位相も計測する必要があります。

図3:電圧と電流によるインピーダンス計測

置換法を応用したインピーダンス計測の典型としてブリッジを用いる方法があります。(図4)

ブリッジは図4のように回路素子を4つの辺に分けてふたつの電流通路を作り、両者の中間点に検出器を接続した後に検出器の出力がゼロになるように各辺を調整します。

この時、図4に示したように、向き合う辺のインピーダンスの積が等しくなることを利用し、既知のインピーダンス3個から未知のインピーダンス(Zx)を求めます。

図4:ブリッジによるインピーダンス計測

反対に、利用される機会が増えたのがLCRメータです。

LCRメータは、LCZメータやLCRハイテスタ、インピーダンスアナライザなどの名称で市販されており、部品を接続するだけで精度の高い計測値が誰でも簡単に得られます。

コンデンサやコイルなど電子部品の値を知るためのインピーダンス計測器として今や欠かすことができません。

DCバイアスを重畳したり、任意の周波数や電圧・電流値における計測ができるモデルもたくさんあります。

ちなみに、市販されているLCRメータの多くは自動平衡ブリッジと呼ばれる図5の回路を採用しています。

「ブリッジ」という名前が付いていますが、原理としては素子の電圧と電流からインピーダンスを算出しています。(コラム参照)

図5:自動平衡ブリッジ

自動平衡ブリッジの動作

少し専門的になりますが、よく見ると図5の回路はオペアンプを使った反転増幅器の基本回路と同じです。
ポイントは、図に二重丸で示したP点(反転入力)にあります。
この回路は負帰還の作用によって常にP点の電圧がゼロになるように動作します。
また、交流の信号源によって未知試料(Zx)に流れた電流は全てが帰還抵抗(Rs)に流れ込みます。
その結果、Zxにかかる電圧は信号源の電圧V1と同じになると共に、増幅器の出力電圧は試料を流れる電流(i)と帰還抵抗(Rs)の積になります。
従って、V1とV2を検出してその比を採ればインピーダンスが求まります。
V1とV2を複素数として求めるため、検出器(DET)は信号源の位相情報を利用します。


ただし、図5のLCRメータでインピーダンスを計測するには二つの問題があります。

ひとつは、負帰還増幅器を使用することによる周波数の限界があるという点です。

増幅器に十分な利得がある周波数帯域内では図5のP点の電圧がゼロに保たれるので、試料の電流は全てLCRメータに取り込まれ、高精度な電流計測ができます。

ところが、周波数が高くなって増幅器の利得が不足すると、負帰還の動作が不完全となり、誤差を含むようになります。

このため、低域は商用周波数以下から使用できますが、高域は数100kHz程度が限界です。

もう一つの問題は、試料に流れる電流が全てLCRメータに流れ込まなければならないという点です。

単体の部品などアース(グラウンド)から浮いた試料であればこの条件を満足しますが、回路上の特定の点のインピーダンスを計るときなどは、試料に流れた電流がLCRメータではなくアースへ流れてしまうので正確な計測ができなくなります。

この問題を回避する方法が無いわけではありませんが、誰でも簡単に計測できるというLCRメータ本来のメリットは失われます。

こうしたことから、実際のインピーダンス計測において、これら二つの問題点のうち何れかを含む場合は、LCRメータ以外の計測器を用いることになります。


ところで、LCRメータに限らず、単一周波数でのインピーダンス計測では、想定する等価回路(直列or並列)が異なると、同じ試料でも指示値が異なります。

ちなみに、理想的なコンデンサなどでは等価回路の選択による違いは現れません。

ところが、損失の有る(抵抗成分を多く含む)部品などでは直列等価と並列等価での指示に差が現れるので、設定ボタンを切り換えて確認するといった配慮が必要です。

なお、この差は原理上現れるもので、計測器の精度とは関係ありません。

図6:等価回路による指示値の違い

・・・・・・・・・・・・・・・・ 続く

ページトップへ