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LCRメータと5端子法

LCRメータと5端子法

抵抗、コンデンサ、コイルなどの値を知りたいとき、デジタル式のLCRメータを使えば誰でも精度良く計測できます。
ところで、LCRメータには五つの計測端子がありますが、それは何のためであり、また、どのような注意が必要なのでしょうか。


デジタルLCRメータは、抵抗、コンデンサ、コイルなどの値を手軽に、かつ精度良く計測できる便利な計測器です。
LCRメータが出現するまでは、ブリッジ回路を利用して計測していたため、平衡操作などが難しく、熟練を要する作業でした。

それが、LCRメータの出現によって一変しました。
LCRメータなら、ただ試料をつなぐだけで、値が表示されます。

表示確度も向上しているほか、計測周波数の拡大、試料にかかる計測信号のレベルを設定できものや、トランスの巻線比を表示できるものなどがあり、機能的にも充実しています。

LCRメータの一例(キーサイト・テクノロジー)

ただし、計測器の機能・性能が向上したからと言って、計測にまつわる不確かさ(誤差)の要因が無くなるわけではありません。

LCZメータの場合は、計測端子に被計測物を直接つなぐことができるのは希です。
何らかの手段でその間を接続しなければなりませんが、この部分で生じる寄生的な静電容量やリード線の抵抗などは、本来の計測値と合成されて表示されてしまいます。

計測器と被計測物(Zx)をつなぐ配線の抵抗やインダクタンス、配線間・対接地間の静電容量や抵抗が誤差になります。

被計測物と計測器の計測端子の間で生じる誤差要因(Zxが本来の被計測物)

接続による誤差を少しでも小さくするために、LCRメータでは回路的にさまざまな工夫が施されています。
その一つが、計測端子の電極構成です。

ほとんどのLCRメータの被計測物接続部は、下の写真のように、5つの端子が並んでいます。
5個の端子のうち、4個は信号のための端子です(写真右側の4個のBNC)。

LCRメータの端子構成例

LCRメータの原理は、突き詰めて言うと、被計測物に電流を流して、被計測物両端の電圧を計測して、電圧と電流の関係(インピーダンス=電圧÷電流)から値(インピーダンス)を求めることです。
四つの端子のうち外側の二つは、このための電流の出入り口(計測信号は交流)、内側の二つは電圧を測るための検出端子です。

何故、電流の端子と電圧の端子が別々に出ているのかというと、リード線の抵抗やインダクタンス成分を計測値に含めないようにするためです。


下の図で、Zxが被計測物で、番号が付いている丸印はLCZメータの端子、回路記号で抵抗とコイルになっているのが接続のリード線であるとします。

もし、図のように電圧検出端子(2と3)を被計測物の直近の両端に接続できるとすれば、リード線の抵抗やインダクタンスがいくらあったとしても正しい計測結果が得られます。
計測値は被計測物を流れる電流と、計測物両端の電圧を測ることになり、原理に忠実だからです。
これは一般に「四端子法」と呼ばれています。

5端子接続

このように、電流と電圧の端子を分離して4つの端子で計測するのは、被計測物のインピーダンスが小さい場合(値の小さな抵抗、巻き数の少ないコイル、容量の大きなコンデンサ)の場合非常に効果があります。
インピーダンスが小さい場合は、リード線の抵抗やインダクタンスが相対的に大きな誤差になるからです。

従って、被計測物が低インピーダンスのときは、必ず四本のリードを使い、電圧検出端子からのリードが被計測物の直近で電流端子からのリードとつながるようにしなければいけません。

計測対象によっては、(被計測物側に)電流端子と電圧端子が用意されていることもあります。


ところで、上の図には、電圧検出端子からのリード線の抵抗やインダクタンスは示されていません。
電圧検出のリード線にも抵抗がありますが、LCZメータの電圧検出端子のインピーダンスは極めて高く設計されていて、リード線に抵抗があっても殆ど電圧降下を生じることが無く、誤差要因として無視できるからです。


被計測物のインピーダンスが高くなると事情が少し変わります。
高インピーダンスでは周囲の金属物との静電容量などによる結合の影響を強く受けるようになり、これが誤差の要因になります。

これを防ぐには、被計測物にシールドを施さなくてはなりません。高インピーダンスでは静電気に対するシールドで良いので、薄い金属で被計測物を覆いますが、シールドの電位が被計測物と異なると、シールドとの静電容量が誤差になるので、シールドのために電位を考慮した端子が出ているのが普通です。
このための端子を「ガード」と呼び、これが5番目の電極です。

LCRメータは低インピーダンスから高インピーダンスまで広く計測するので、4端子+ガードで、合計5端子とする5端子法が採用されています。

ガードは一般にはグラウンド電位(で影響が無いように内部回路が工夫されている)ですが、原理的には前図に示したように被計測物に加える信号でシールドを駆動しています。


なお、リード線がほかのリード線と静電的あるいは磁気的に結合すると、これも誤差になるので、リード線はシールド線を使い、ループ状になることも避けなければなりません。
特に、低インピーダンスでは電磁的な結合、高インピーダンスでは静電的な結合に注意してください。


これまで述べたことを加味した上で、実際上の使い勝手を向上させる目的で、各メーカではLCRメータと計測物を接続するためのテストフィクスチャと呼ばれる治具を用意しています。
これらを使用することで、手軽で不確かさの少ない計測が可能になりますが、万能の治具は存在しないので、適切な使い分けと接続が必要です。
以下に一例を掲げます。


最も一般的なテストフィクスチャ

中位インピーダンスの電子部品計測に適す。
部品のリードが同方向に出ていても反対方向に出ていても使用できる。
端子間の距離も変えることができる。


ケルビンコンタクト式のテストフィクスチャ

比較的大型なものの計測に適す。
一見、2端子に見えるが、内部は4本の線(各2本)が使われており、4端子計測ができる。


4端子のテストフィクスチャ

低インピーダンスの計測用。


チップ部品用のテストフィクスチャ

部品を中央に乗せ、端のねじを回して接触させる。

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