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交流電源装置

交流電源装置

ほとんどの電子回路は直流で動作しますが、電子機器の多くは、電力会社から供給される交流電源を使います。
では、なぜ交流電源装置が必要なのでしょう。


私たちが生活の中で使ったり見かけたりする電子機器は、電池もしくは商用の交流電源が使われます。
商用電源とは、日本の家庭で言えば、交流の100ボルト50/60Hzの電源のことです。
家庭内ではどこの部屋にもコンセントがあって、いつでも自由に使えます。
エアコンなどでは200ボルトであったり、工場などでは三相200ボルトが使われることもあります。

交流電源装置は、商用電源と同じ交流を出力する装置です。
入力はバッテリなど直流であることもあります(この場合はインバータと呼びます)が、多くの場合は商用電源(交流)です。

左画像キャプション

入力も出力も交流?このような装置が何故必要なのでしょうか。

商用電源は、電力会社から常に安定して供給されていて、通常の生活では信頼性などに不安を感じることはまずありません。

ところが、例えば、精密な電気計測を行う場合は、コンセントに来ている電気が本当に正弦波交流の100ボルト50(60Hz)なのか、正しい電源が常に維持されているかといった電源の信頼性について確認する必要がでてきます。


実際に、コンセントに来ている電源を調べてみると、電圧が足りなかったり、変動したり、波形が正弦波ではなかったり、ノイズが混ざっているなど、理想的な値から大きくかけ離れていることが珍しくありません。

もし、このような状態のまま計測を行うと、正しい結果が得られない可能性があります。
また、工場などでは生産が正しく行われず、不良品ができてしまうこともあるでしょうし、コンピュータや工作機械が誤動作することも考えられます。


電圧の不足や変動、あるいはノイズなど、商用電源の異常を引き起こす原因はどこにあるのでしょうか。

電源を供給する電力会社が正しく電気を供給すれば問題無いように思うかもしれませんが、その答えは「No」です。

実際に、電力会社が供給する段階での電源の信頼性は極めて高いのです。
にもかかわらず、実際のコンセント端で電源が異常となるのは、コンセントまで送られる過程に異常となる原因があるからです。


例えば、家庭や工場内に引き込まれた電気は、かなりの長さの線(電灯線)で配線されます。そして、各部屋などに分岐しますが、これらの配線抵抗はゼロではありません。
この抵抗と機器に流れる電流によって電圧降下が生じます。
その結果、コンセント端の電圧は、供給電圧より電線での電圧降下分だけ低くなります。

もし、機器の消費電流が変化すれば、電圧降下の量も同時に変化するので、結果的に機器に加わる電圧(コンセントの電圧)が変動することになります。

また、同じ配線系統に別な機器が接続されていて、その機器がオンオフを繰り返すとすれば、両者を合計した消費電流も繰り返し変化をすることになるので、もう一方の機器に加わる電圧も変化してしまいます。
下の図はこのときの様子を示したものです。

同一線路に接続された機器の影響

同一線路に接続された機器の影響
図で、Vsは電力会社からの供給電圧、VLは負荷端(コンセント部)の電圧。

Vsと機器1の消費電流は一定であるとしても、機器2がオンオフを繰り返すと、配線による抵抗Zによる電圧降下も変化し、VLは周期的に変化する。
このため、機器1に供給される電圧も同じ影響を受けてしまう。

同様に、機器で消費される電流が正弦波状ではない場合は、電圧の波形ひずみとなって現れます。
周囲に放電を利用する機器などがある場合や送電系統に落雷があった場合などはノイズが混入します。
送電系統への落雷では、瞬断(瞬停)といって、ごく短時間電圧が低下したりゼロになることもあります。
もし、発電機を利用して電源を得る場合は周波数変動もあるでしょう。
そして、これら電源の異常は、機器の正常な動作や正しい計測の妨げとなります。


交流電源装置にはさまざまな種類があります。

最近目にすることが多くなったものに、UPSと呼ばれる無停電電源装置(Uninterruptable(もしくはuninterruptible) Power Supply)があります。
UPSは万一の停電からコンピュータなどを保護するために用います。
停電の際にバッテリなどに蓄えた電気を交流に変換し、コンピュータの待避処理が終わるまでの短時間だけ電源を供給するためのものです。
従ってUPSでは出力のクオリティよりも停電時にスムースに動作が切り替わることが最優先されます。
平常時は商用電源からの電気をそのまま通すか、ある程度加工するだけの仕組みになっているので、波形の品質を改善したり電圧を安定にする機能は、特別に設計されたもの以外は期待できません。


これに対して、電圧値や波形のひずみなど電源のクオリティを改善する目的で作られた電源は、一般に「交流安定化電源」と呼ばれます。

交流安定化電源は、先に述べた電圧の変動や波形のひずみを大幅に改善する働きがあります。

どのくらい安定度が増すかは、レギュレーション(電圧変動率)という項目で評価しますが、レギュレーションにはラインレギュレーションと、ロードレギュレーションの二通りがあります。

ラインレギュレーションは、電力源側(電力会社側)の電圧が変動したときに、負荷側(電源の出力)がどのくらい変動するかを表します。
一方、ロードレギュレーションは、負荷の消費電流を変化(通常は0→定格負荷)させたときに、出力電圧がどれくらい変化するかを表します。
また、波形の品位は、オーディオ信号と同じようにひずみ率で評価します。

交流安定化電源には、安定化機能のほかに周波数変換や電圧変換の機能を持ったものもあります。
このタイプの安定化電源は、低周波の発振器を信号源に持つ巨大なオーディオアンプ(電力増幅器)と考えることができます。
発振器の周波数や電圧を変えれば、出力も同じように変わるので、電圧や周波数の変換が可能になります。
海外向けの商品を国内でテストあるいは生産する場合など、輸出先での電源仕様(電圧や周波数)と同じ仕様の電源を機器に供給しなければならない場合などに多数使用されています。

計測に交流電源を用いるもう一つの目的として、低周波イミュニティのテストがあります。
低周波イミュニティのテストとは、電圧の低下や瞬断など、電源の異常状態を故意に作り出して、電子機器が正常に動作するか否かを試験するものです。

ちなみに、イミュニティ(immunity)とは、「免疫」とか「耐性」という意味です。
この目的で使われる電源は、上記と同じ発振器+電力増幅器タイプの電源です。


商用電源ではノイズも大きな問題です。
電源ラインのノイズを除去するアイテムとして、ラインフィルタやノイズ除去専用のトランスがありますが、これらは電圧の安定化や波形改善(ひずみの除去など)の機能はありません。
安定化電源にはノイズ除去の機能を期待できますが、高周波のノイズに対してはラインフィルタなどの方が性能的に勝ります。

従って、大きなノイズが懸念される場合や、ごくわずかなノイズも問題になる場合は、ラインフィルタと交流安定化電源を併用するのが一般的です。

交流安定化電源のご紹介

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