計測器・測定器玉手箱

直線性と波形ひずみ (高周波編)

直線性と波形ひずみ (高周波編)

携帯電話に代表される無線の受信機・送信機や高周波の計測器などにおいて、使用される増幅器に非直線性があると、不要な電波をまき散らしたり、実存しない信号が聞こえたり、好ましくない現象が起きます。


特に高周波では、発生した高調波が電波として送信される可能性があります。
その場合、高調波に相当する周波数を使用している機器に妨害を与える可能性があるので注意が必要です。
低周波では非直線性によって発生した高調波がほかの機器に影響を与えるチャンスは少なく、自らの機器(あるいはシステム)内部での問題であるのに対して、高周波ではほかの機器への影響を考えなければならないところに大きな違いがあります。

図1 非直線による高調波の発生

このように、意図しない不要な電波は「スプリアス(不要輻射)」と呼ばれます。
[参考:高調波はスプリアスには含めないとする考え方もあります]


非直線性に起因するスプリアスの発生は高周波機器にとって大きな問題ですが、残念ながら、低周波の機器よりも高周波の機器の方が直線性が悪いのが一般的です。
低周波機器では回路に多量の負帰還を施すことによって直線性を改善できるのですが、高周波回路では安定した負帰還を施すのが難しいからです。
従って、多くの場合、高周波機器ではある程度の非直線性を前提として設計が進めらます。


機器の非直線性として最も顕著なのは「飽和」です。
飽和は、増幅器などに入力される信号のレベルがある大きさに達すると、出力が比例して増加できなくなってくる現象です。
増幅器を直線性の良い状態で使用するには、信号のレベルを飽和する値以下に維持しなければなりません。


図2は、その様子をグラフに表したものです。
完全にリニアリティの保たれた理想の特性と比べて、実際の特性は入力レベルの大きな部分で飽和していきます。
飽和はゆっくりと始まることが多く、ある点からグラフが水平に折れ曲がる(完全飽和)ということは高周波ではまれです。

どこまでを直線とみなして使うことができるのかは増幅器やシステムの精度要求によって異なりますが、一般には理想から1dB低下する辺りまでが限界とされています。

図2 増幅器の飽和と1dB低下点

このため、理想から1db低下する点のレベルを「1db圧縮点」、「1db低下点」、「1db減衰点」などと呼んでその増幅器を利用できるレベルの目安にすることがあります。
なお、これまでの話は増幅器を例にしてきました。がしかし、増幅器は例えば計測器の入力端子のすぐ後に配置される回路であり、携帯電話で話をするときは携帯電話の送信部分で増幅器が働いています。つまり、高周波のあるところには高周波増幅器があり、高周波の増幅器があるところには、必ずスプリアスの問題があります。


高周波において、非直線によって発生する有害な現象にはこのほかに「相互変調」や「混変調」などがあります。
これらについては別に項目を設けてありますが、相互変調や混変調は増幅器に複数の信号が入力されたときに発生する有害な信号です。
ラジオやテレビなど、外部の電波を「受信」する機器では、アンテナに近い回路には希望する信号のほかに、希望しない信号(例えばほかの放送局の信号)が加わるため、複数の信号に対する増幅器の応答特性は極めて重要な要素になります。
一般には二つの信号を加えて計測するので「2信号特性」と呼ばれる特性値です。

特に、入出力の関係が3次関数になっていると、希望する信号にごく近接した周波数成分を持った有害な信号が発生します。これを3次の「相互変調積」と呼びますが、相互変調成分は増幅器の入力レベルを増していくのに従って非直線部分から急激に増加していく性質があります。
そこで、この性質を利用して増幅器の線形性を評価することがしばしば行われます(図3)。

図3 3次混変調積(IP3)

特に、基本波成分の直線部分を延長した線と、相互変調積を延長した線の交点を「インターセプトポイント」と呼んで、増幅器がどのくらい大きな不要信号に耐えて使えるかの目安にします。インターセプトポイントは仮想的な点であって、実際にはそのレベルまでの信号を加えることはできませんが、一つの数字で増幅器の特性を表すことができるメリットがあります。

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