IT機器玉手箱
買取から継続利用へ、サブスクリプションがPC運用にもたらす影響とは?(前編)
買取から継続利用へ、サブスクリプションがPC運用にもたらす影響とは?(前編)
(2018.11.05)
音楽から居酒屋飲み放題まで、サブスクリプションは花盛り
今、世の中では「サブスクリプション」が流行の兆しを見せています。もともと雑誌の定期購読を指す用語ですが、最近では一定期間の利用料金料金を支払って、サービスを受けるビジネスモデルを指すようになりました。
身近で代表的なサービスとして思い浮かぶのは、月額課金の音楽、動画、本など、いわゆる「〜し放題」系のものです。
デジタルデータへの変換が比較的容易なこれらのコンテンツは早々にサブスクリプションへと方向転換し、アマゾンやアップル、グーグルなどの巨大プラットフォーマーが牽引しているのはご存知の通りです。
現在ではデジタルの世界だけではなく、リアルの世界でも数多くのサービスが生まれています。主軸は「モノ」と「体験」の2つです。モノではスーツ、アクセサリー、コスメ、靴、家具など、体験では高級車の乗り放題、カフェの飲み放題、居酒屋の飲み放題などジャンルも多岐にわたっています。
ビジネスITの世界でも、早い段階からサブスクリプションの概念を採り入れてきました。象徴的なものがクラウドです。2000年代後半における一連のクラウドサービスの勃興は、自社でシステムを所有するオンプレミスから、課金方式によりWeb上でリソースを共有するスタイルへと大変換を促しました。これにより、デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代が到来。この10年余りのビジネススピードの加速ぶりは、IT業界にいる皆さんであれば身をもって体感していることでしょう。
さらにクラウドの一般化に伴い、アドビが「Creative Cloud」で、マイクロソフトが「Office 365」でそれぞれ“パッケージ買い切り”のビジネスモデルをサブスクリプションへ転換するなど、ソフトウエアでも新たな常識となってきました。
企業にとってサブスクリプションの利点は何か
では、企業がサブスクリプションを利用するメリットとは何でしょうか。ソフトウエアを例に考えてみましょう。
これまでのパッケージモデルでは最初にソフトウエアを購入し、次のバージョンまで使うことが通常でした。仮にその期間が5年間で購入価格が10万円だとすれば、5年間の長期に渡って10万円のIT投資が「あるソフトウエアの利用」に固定されている状態になります。
しかしサブスクリプションモデルでは、多くが1カ月の利用料金で算出します。つまり5年(60カ月)という長期スパンではなく、60分の1の短期スパンでコストを割り出しますので、残った資金をほかのIT投資に充当することができるわけです。しかも常に最新の機能が追加されて配信されますから、「もう古くて使えない」といった不安にとらわれることがありません。それゆえ、生産性向上の面でもメリットがあります。
先述したように、DXが本格化するにつれてビジネスITの流れは非常に早くなってきています。IT投資のリターンはできる限り早いほうが好ましく、さらに時間や対象に縛られることのない柔軟なIT投資が望まれます。これらが、企業経済の視点から見たサブスクリプションが支持される理由と言えるでしょう。
後編となる次回は、ソフトウエアのサブスクリプション化にPCはどのようなサイクルで対応していくべきかについて考察したいと思います。