IT機器玉手箱
“Windows 10”の大波でIT運用の概念が変わる(前編)
“Windows 10”の大波でIT運用の概念が変わる(前編)
(2018.10.29)
Windows 7の有償延長サポートは企業にとってメリットなのか
2018年9月、マイクロソフトはWindows 7のセキュリティ関連の有償延長サポート「Windows 7 Extended Security Updates(ESU)」を提供すると発表しました。これによりWindows 7のセキュリティに関連する修正パッチが、有償形式ではあるものの2023年1月14日まで入手可能となりました。
ご存知の通りマイクロソフトは本来、2020年1月14日にはWindows 7のサポートを終了すると発表していました。今回の発表によって、2023年までの3年間はWindows 7にセキュリティホールが見つかってもすぐに修正パッチを当てることができ、安全に使い続けられることになります。
とはいえESUではデバイス単位でサポート費用が課金され、さらにその価格が年毎に上がっていくことになっています。企業のように大量のPCにWindows 7がインストールされている場合は、その分だけサポートにかかるコスト負担が年々かさんでいくことになります。
すなわち今回の措置は、企業にとってWindows 10へのアップデートを先送りにする口実を作っただけであり、システム運用コストの面からも2020年1月を超えてESUを利用し続けることは、決して得策とは言えないように思われます。
むしろ2020年1月を待たずに早期にWindows 10へ移行する方が、システム運用上は現実的と言えるのではないでしょうか。
巨大ファイルのアップデートも負担に
Windows 7からWindows 10への移行で、生体認証機能がOSレベルで利用できたり、仮想デスクトップ機能が使えたりするなど、最新のテクノロジーを生かしたシステムが導入できるようになります。
一方、企業で管理するPCのOSをすべてWindows 7からWindows 10に移行すると、その運用はWindows 7までとは大きく異なってきます。
企業におけるWindows 10の運用で特に課題となるのが、年2回実行される大型アップデート「Feature Update」(以下FU)への対応です。FUでは、毎年3月と9月に機能追加が行われるだけでなく、バージョンが更新されます。それに伴いシステム管理担当者は、運用プロセスや体制の見直しを行う必要があります。さらに、ソフトウエアの互換性についても確認が求められます。
またWindows 10ではFUだけでなく、不具合の修正とセキュリティの向上を目的とした小規模な品質アップデート「Quality Update」も毎月1回実行されます。これらのアップデートによってWindows 10を徐々に進化させるのが、「Windows as a Service」(WaaS)という概念です。
WaaSはWindows 10から導入された概念であるため、それ以前のOSを運用してきた情報システム管理者にとっては、システムの管理運用に関わるさまざまな負担を新たに背負うことになります。
さらに年2回のアップデートでは、数GBとなる巨大なデータ量の更新プログラムの配信も、システム管理者の頭を悩ませます。ある程度の規模を持つ企業が、数GBもあるファイルを一斉にダウンロードするとネットワーク帯域が圧迫され、社内システム全体で仕事ができなくなってしまうでしょう。
そのため、マイクロソフトでは更新プログラムを適用するための制御用サーバ・アプリケーション「Windows Server Update Services」(以下WSUS)を無償で提供。さらなるサポート機能として「BranchCache」も提供されています。
BranchCacheは一度ダウンロードした大容量の更新プログラムをキャッシュ (保存)し、複数のPCにそのファイルを配信することで一斉ダウンロードによる回線負荷 を緩和します。例えばデータセンターなどの特定拠点に保存されているコンテンツを別の支店にダウンロードしたときに、そのデータを支店内でキャッシュします。このキャッシュしたコンテンツをダウンロードするイメージです。すなわち拠点間の通信量を劇的に減らすことができます。
とはいえ、そういったアプリケーションやツールを設定したり管理運用したりするのもシステム管理者であるため、社内PCのOSをすべてWindows 10に移行することで、負担は増える一方です。